第250章 来てくれて良かった

そして、なぜか分からないけど、不安な気持ちがどんどん強くなっていった。

特に下校時間が近づくにつれて、彼女の心臓の鼓動は激しくなっていった。

まるで時間がなくなってしまったかのように、決断するための時間がほんの少ししか残されていないような気がした。

でも、どんな決断をすればいいのか分からなかった。どんな決断も間違いになるのではないかと恐れていた。

まるで強制的に結婚させられる少女のように、心の中は不安と未知への恐れでいっぱいだった。

心の重圧が大きすぎて、海野桜は朝から先生の授業に集中できなかった。

ついに、下校のチャイムが鳴った!

海野桜は心臓が飛び出しそうになり、急いで鞄を片付けて逃げ出そうとした。

東山裕が突然目の前に現れるのが怖かった。

橋本友香を探しに行こうとした時、携帯が鳴った。橋本友香からだった。

「桜ちゃん、本当にごめんね。午後急用ができちゃって、一緒に買い物に行けなくなっちゃった。ごめんね、また今度行きましょう。」

「大丈夫だよ……」海野桜は橋本友香と少し話してから電話を切った。

橋本友香との買い物を口実に東山裕を断るつもりだったのに、今はその口実もなくなってしまった。

海野桜は東山裕を避けるためのいい言い訳が思いつかなかった。

すると、東山裕からも電話がかかってきた。

海野桜は深く息を吸って、電話に出た。「もしもし。」

男性は低い声で尋ねた。「もう着いているよ。いつ出てくる?」

「ちょっと待って、今下校したところ……」

「分かった、待っているよ。」

海野桜は電話を切り、教室の廊下で呆然と立ち尽くした。

今どうすればいいのか、直接東山裕に会いに行くべきか、それとも逃げるべきか?

でも、いつまで逃げられるというの?いつかは向き合わなければならないのに!

それに、今すぐ決断する必要もないじゃない。

海野桜は深く息を吸って、学校の正門へ向かって歩き出した。

あの時以来、東山裕は目立つ車で学校に来ることはなくなった。

海野桜が校門を出ると、彼の黒いマイバッハが目に入った。東山裕はサングラスをかけ、優雅に車のドアに寄りかかっていた。その気品のある美しい外見は、多くの生徒の視線を集めていた。

しかし彼は無表情で、レンズの下の目は海野桜の姿だけを探していた。