第244章 海野桜だけを娶りたい

彼女の表情が一瞬硬くなった。「あなたたち二人、本当に復縁するつもり？」

東山裕は頷いた。「はい」

「いいえ……」海野桜が否定しようとした瞬間、テーブルの下で手を強く握られた。

東山裕は横を向いて深い眼差しで彼女を見つめた。「僕は君が僕に不満を持っているところがたくさんあるのは分かっている。でも大丈夫、僕は待つよ。この人生で僕が娶るのは君だけだ。たとえ君が僕と結婚してくれなくても、僕は誰とも結婚しない！」

海野桜は一瞬呆然とし、他の人々も驚愕した！

特に張本花江と浜田英司は、まさに晴天の霹靂だった！

東山裕は海野桜だけを娶りたいなんて、どうしてこんなことに？！

「裕、実はあなたは知らないでしょうけど、昔あなたと婚約していたのは、私の娘の碧なのよ」彼女は思わず口走った。

今度は皆が再び驚愕した。

海野桜は目を見開いて、何が起きているのか理解できなかった。

「こほん！」浜田英司は老人の険しい表情を見て、激しく咳払いをし、張本花江を不満げに睨みつけた。「もう何年も前の話だろう、なぜそんなことを持ち出す」

張本花江は既に言葉を口にしてしまったので、今日のうちにすべてを明らかにしようと決めた。

「これは事実よ。碧が行方不明にならなければ、今東山裕と結婚していたのは彼女のはずだわ。私たちは碧がもう見つからないと思ったから、桜を嫁がせることに同意したのよ」

浜田英司はわざと言った。「そうだとしても、もう過去の話だ」

「でも裕と桜は離婚したじゃない！」

つまり、今の東山裕の妻の座は'本来の持ち主'に戻るべきだという意味だ。

張本花江は周りの表情を気にせず、東山裕だけを見つめて言った。「裕、はっきりさせておきたいの。私の碧こそが、あなたの幼い頃からの婚約者なのよ！」

「黙れ！」浜田統介はついに怒り出した。

彼は激しく箸をテーブルに叩きつけ、張本花江は思わず首をすくめた。

浜田統介は深いため息をつき、頭を抱えながら言った。「食事する気が失せた。みんな帰れ、お前たちをここに招くつもりはない！」

「お父さん、私たちはそんなつもりじゃ……」浜田英司が何か説明しようとしたが、老人は全く聞く気がなく、立ち上がって部屋を出て行った。

「おじいちゃん……」彼の苦しそうな様子を見て、海野桜はすぐに彼を支えに行った。