海野桜たちが病院に着いたときには、すでに日が暮れていた。
橋本友香はまだ目覚めていなかったが、体の具合は大分良くなっていた。
医師は彼らに言った。「男性の方が彼女を病院に連れてきました。救急処置が終わった後、浜田さんの電話番号を残して帰られました。」
海野桜は驚いて尋ねた。「その方がどなたか分かりますか?」
医師は首を振った。「分かりません。ただ、その方が彼女を救ったんです。当時全身びしょ濡れで、病院に連れてきた時はほとんど力尽きそうでした。」
医師が去った後、海野桜は不思議そうに東山裕に尋ねた。「橋本友香を救ったのは柴田治人さんですか?」
彼だけが橋本友香と彼女の両方を知っているからだ。
東山裕は頷いた。「おそらく彼でしょう。」
「でも、なぜ自分で残らなかったんでしょう?兄妹なのに。」血のつながりはないとはいえ。
柴田治人と橋本友香の過去について、東山裕はある程度知っていた。
「彼にはそれしかできなかったのかもしれません。」彼は低い声で言った。
海野桜は首を傾げた。「どういう意味ですか?なぜそれしかできないんですか?」
「彼らの間には過去に因縁があるんです。具体的に何があったのかは私もよく分かりませんが、当時の出来事で柴田治人の性格は大きく変わってしまいました。」
海野桜は驚き、さらに好奇心を抱いた。橋本友香と彼の間で一体何があったのだろう。
しかし今は、橋本友香が目覚めるのを待つことが最も重要だった。
………
橋本友香は長く意識不明のままではなく、すぐに目を覚ました。ベッドの傍らで見守っていた海野桜を見て、彼女は一瞬呆然として、ぼんやりと尋ねた。「桜ちゃん、私、死んでないの?」
海野桜は急いで答えた。「友香さん、大丈夫です。生きています、ちゃんと生きています!」
橋本友香は自嘲的に笑った。「死ねなかったのね……」
やっとの思いで命を絶つ勇気を振り絞ったのに、死ねなかった!
「友香さん、どうしたんですか?なぜ死のうとしたんですか?何があったんですか?私に話してください、一緒に解決しましょう!」海野桜は心配そうに尋ねた。
橋本友香は目を赤くして、苦しそうに言った。「私自身が生きたくなかったの。生きている意味が分からなくて……」