橋本友香は苦しそうに言った。「今日、母は利益のために私を売り渡そうとして……蘇我直哉に売ろうとして、私に薬まで飲ませようとしたの。うぅ……」
海野桜は衝撃を受け、橋本友香の腕を掴んだ。「あなたに何をしたの?!」
橋本友香は首を振った。「何もされなかったわ。蘇我直哉を殴って逃げたの。でも、私、とても辛いの……」
海野桜はほっと息をついた。「友香さん、無事で良かった」
「桜さん、私、本当に辛いの。どうしてお母さんは私にこんなことするの?」涙で顔を濡らした橋本友香は尋ねた。「私は本当に彼女の娘なの?私のことを少しも愛していないの?」
海野桜はティッシュを取り出して彼女の涙を拭いてあげた。「友香さん、この世には色んな親がいるわ。これはあなたの責任じゃない。お母さんの過ちよ。彼女があなたを愛さないなら、あなたこそ自分を大切にしないといけない。今からは、もう彼女の愛を求めるのはやめて、自分をしっかり愛していきましょう。いい?」
橋本友香は泣き止み、長い間呆然としていた。
海野桜は続けた。「友香さん、誰かのために自分の命を捨てる必要なんて全くないわ。覚えておいて。誰にも愛されないことは怖くない。怖いのは自分で自分を愛せないことよ!」
橋本友香は衝撃を受けた。「自分を愛する?」
「そう!」海野桜も目を赤くした。「自分を愛することができて初めて、幸せを掴めるの。誰かのために、なんでも犠牲にしたり、自分を見失ったり、自分を愛することを諦めたりしちゃダメ!」
橋本友香の目が揺れ、心が大きく動いた。
その時、ドアの外に立って全てを聞いていた東山裕の目も複雑な色を帯びていた。
海野桜がこんな言葉を言えるとは、彼は全く予想していなかった。
なぜなら、かつての彼女は、自我もなく、自分を愛することも知らない少女だったから……
しかし、その後突然変わった。だから彼と離婚したいと、あんなにも強く思ったのだろうか?
一体何が、彼女をこれほど大きく変えたのだろう?
しかし何であれ、東山裕の心は穏やかではなかった。きっと自分に関係があるからだ。
そうでなければ、彼女が突然あれほど断固として彼を愛さなくなるはずがない……
……
海野桜は橋本友香を慰め、橋本友香の感情もようやく落ち着いた。
多くのことを、彼女は理解し、受け入れることができた。