彼女は電話を切り、目を閉じると、すぐに眠りについた。
しかし東山裕は、眠れなかった!
やっと海野桜を手に入れたのに、何もできず、しかも別居まで我慢しなければならない!
神様は本当に残酷だと思った。
でも彼にはどうすることもできなかった。海野桜は絶対に譲らなかったから。
彼は疑っていた。彼女は昔の、彼を見ると動けなくなるような海野桜ではなくなったのではないかと。
きっと中身が入れ替わってしまったんだ。もう昔の海野桜じゃないんだ!
東山裕は退屈にあれこれと考えを巡らせていた……
……
夢のない一夜が過ぎた。
翌日早朝、海野桜は早起きして病院へ橋本友香を見舞いに行った。
幸い、今日の橋本友香は顔色もよく、気分も良さそうだった。
橋本友香は自分の計画まで話してくれた。もう柴田家には戻りたくない、外で部屋を借りて、これからは自分の力で生きていきたい、もう家族とは一切関わりたくないと。
海野桜は彼女を支持した。あんな母親なら、離れた方がいい。
そうすれば柴田治人からも遠ざかれる。時間が経てば、彼への気持ちも薄れていくかもしれない。
二人のことは本当に残念だった。良いカップルだったのに、橋本友香の母親のせいで一緒になれず、他人同士になってしまった。
でも、もう二人には可能性はなかった。
橋本友香の母親は他人の家庭を壊しただけでなく、柴田治人まで計算に入れていた。
もし自分だったら、わだかまりなく橋本友香と一緒にいることはできないだろう。
一緒になれないのなら、別れた方がいい。
そうしなければ、橋本友香は一生あの恋から抜け出せない。
しかし橋本友香にはお金がない。まだ学生で、ほとんどの出費は高橋実紀が出していた。しかも今は大学2年生で、卒業までまだ2年もある。
独立して生活するのは、そう簡単なことではない。
海野桜は笑って言った。「それは問題ないわ。私にはお金があるから、大学を卒業するまで十分よ」
橋本友香は驚いて、すぐに首を振った。「桜ちゃん、私はあなたのお金なんて要らないわ!自分でバイトするから。手も足もあるんだから、餓死はしないわ!」
「ただであげるわけじゃないわ。貸すの。将来就職したら、少しずつ返してくれればいいわ」
「それでもいらない」橋本友香は断固として拒否した。
「どうして?」海野桜は不思議そうだった。