第261章 私は男が好きじゃない

海野桜は少し躊躇してから、頷いて認めた。「そうですね」

「だから私の婚約者を奪ったの?」浜田碧は率直に尋ねた。

彼女があまりにも直接的だったせいか、海野桜は意外にも不快感を覚えなかった。

「彼が最後まで私と一緒にいるとは限らないわ。あなたにもまだチャンスがあるかもしれない」海野桜は半分冗談めかして言った。

浜田碧は眉を上げた。「私にまだチャンスがあると思う?」

「……」正直なところ、そのチャンスは極めて薄いと感じた。

浜田碧はドア枠に斜めにもたれかかり、牛乳を一口飲んで言った。「もし私の両親があなたがまた東山裕と仲直りしたことを知ったら、きっとあらゆる手段を使ってあなたたちを引き離そうとするでしょう。引き離せなくても、あなたを生かさず殺さずにするはず。でも、私が両親を宥めることはできます」

海野桜は彼女の言外の意味を理解した。「条件は何?」

浜田碧は笑い出した。「賢いわね。ええ、条件はあります。東山裕は私に約束したの。私があなたたちの邪魔をしなければ、私と5年契約を結んで、無条件で私をスターにしてくれるって。でも私が望むのはそれだけじゃない。いつでも違約金なしで契約を解除できる権利も欲しいの」

海野桜は驚いた。「あなたと彼は……」

「そう、あの日私が電話番号を手に入れて、彼と話したのはこのことよ」

海野桜は言葉を失った。

浜田碧が最初から東山裕に条件を出すなんて、想像もできなかった。

とはいえ、浜田碧の要求はそれほど無理なものではない。

少なくとも彼女は率直だった。ただし欲張りすぎているけど……

「だから私に東山裕を説得して、あなたにいつでも契約解除できる権利を与えるように言ってほしいの?」

浜田碧は笑いながら頷いた。「その通り。あなたならできると信じてるわ。早く契約を結びたいの。私の要求はそれだけ。私は有名になりたいだけ。他には何も望まないわ。それって十分でしょう?」

「それは私の一存では決められないわ……」

「彼に言ってよ。こんな些細な要求なら、断らないはずよ」

「でもあなたは叔父さんと叔母さんが私に面倒をかけないことを保証できるの?」

「もちろん!」浜田碧はわざと神秘的に言った。「私、男性が好きじゃないって両親に言うわ」

海野桜は驚いた。「女性が好きなの?!」