第260章 ベッドごと持って行く

彼女は他人のためだけでなく、自分のためでもあった……

東山裕は彼女の顔に近づき、優しく唇にキスを落とした。「君の気持ち、良いことも悪いことも、全て僕のためであってほしい!」

海野桜は目を見開いて、不機嫌そうに尋ねた。「良いことは分かるわ。でも悪いことまで?東山裕、それはどういう意味?」

東山裕は低く笑い、黒く輝く瞳は笑みに満ちていた。

「意味は単純さ。僕だけを気にかけてほしいんだ。橋本友香だろうと誰だろうと、君の注意や感情を奪われたくないんだ!」

海野桜は驚き、すぐに彼の甘い言葉に頬を赤らめた。

でも、彼はあまりにも横暴で理不尽だった!

海野桜は彼に注意を促すことにした。「東山裕、はっきり言っておくけど、私はあなただけを気にかけることはできないし、私の世界があなた一人を中心に回ることもないわ」

「なぜダメなんだ?!」東山裕は思わず口走った。「前はできていたのに……」

そこまで言うと、空気が一気に凍りついた。

海野桜は表情を暗くし、彼を押しのけて言った。「運転して。帰りましょう」

東山裕は再び彼女の体を引き寄せ、ついに心の中の疑問を口にした。「なぜ突然変わってしまったんだ?教えてくれ、一体何があったんだ?」

海野桜は彼が何を聞きたいのか分かっていた。

彼は、なぜ彼女が愛していないと言えば本当に愛さなくなり、突然そんなにも冷酷になれたのか知りたかったのだ。

しかし、彼にはその理由が全く分からなかった。

海野桜も彼にその理由を話すことはできなかった。

「たぶん疲れたのかもね……」彼女は淡々と言った。

東山裕は唇を引き締め、明らかに彼女が本当のことを話していないと感じていた。

しかし彼女が話したくないなら、無理に聞き出すこともできなかった。

もう一度軽く彼女の唇にキスをして、彼は低い声で言った。「今度は僕が頑張る。僕は疲れない、一生疲れることはない……」

海野桜の瞳が揺らぎ、心の中の重苦しさが少し晴れたように感じた。

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車は浜田家の屋敷に戻った。

東山裕は海野桜にしばらくキスを続け、彼女がもう耐えられなくなるまでそうしていた。

それでも彼は彼女の手を離したくなくて握り続けていた。「僕の家に帰ろう。全て前と同じように揃っている。君がいないだけなんだ!」