海野桜はガラス窓越しに、意識を失って横たわる彼の姿を見て、また涙が込み上げてきた。
鴻野美鈴は病室の外で見守り続け、海野桜に「安心して、医者が言うには裕は大丈夫よ、きっと乗り越えられるわ」と声をかけた。
「うん!」海野桜は頷き、涙が頬を伝って落ちた。
鴻野美鈴は彼女の涙を拭い、包帯で巻かれた両手を取って、心配そうに「桜ちゃん、今回は大変だったわね...」と言った。
海野桜は気にしない様子で笑って「大丈夫です、ちょっとした怪我だけですから」と答えた。
「でも、あなたが裕のことを気にかけているのは分かるわ」
海野桜は再び東山裕を見つめた。
そう、彼女は彼のことが気になっていた。なぜなら、彼は唯一彼女の心に入り込んだ、唯一彼女の心を乱す男性だったから。
だから海野桜は決めた。今回東山裕が目を覚ましたら、彼とちゃんと一緒になろうと。
これからは、もう二度と離れたくない...
でも、いつになったら目を覚ますのだろう?
東山裕の事故のことは誰もが知ることとなり、彼に関するニュースが飛び交っていた。
警察も事件の捜査に乗り出した。
東山裕の事故に加え、施設の品質に重大な問題が発覚し、市長も重大な関心を示していた。
そのため、この事件は徹底的に調査しなければならない!
一体どこに問題があったのか、とにかく誰かが責任を取らなければならないのだ。
...
橋本友香が海野桜を見舞いに来て、ついでに東山裕も見舞った。
海野桜は東山裕の病室の外で離れることなく見守り続けていた。
橋本友香が色々と慰めの言葉をかけると、海野桜は笑って「友香さん、大丈夫です。それに、ありがとうございます」と言った。
橋本友香は笑い出し、「私に対してそんなに改まらなくていいのに?」
二人が顔を見合わせて笑った瞬間、海野桜は柴田治人が来るのを見た!
彼女の笑顔がゆっくりと消え、橋本友香も彼女の視線の先を見て、同じように笑顔を消した。
彼は東山裕を見舞いに来たのだ。
柴田治人と東山裕は仲が良く、東山裕が事故に遭えば、当然来るはずだった。
柴田治人は東山裕を見た後、海野桜に「お嫂さん、裕兄が今意識不明の状態ですが、何か手伝えることがあれば言ってください」と言った。
「ありがとう...」海野桜は軽く頷いた。
柴田治人はそれ以上何も言わず、立ち去ろうとした。