第271章 東山裕を救う

他の家は倒壊を免れたのに、東山裕の家だけが崩れ落ちた。

彼は瓦礫の下に埋もれ、見つからず、声も聞こえない……

「東山裕……」海野桜は石を掻き分けながら、涙を流して探し回った。

救助隊も到着し、緊急捜索を行っていた!

海野桜は制止を振り切り、必死に彼を探し続けた。豪雨は止まず、彼女の全身は濡れ透き、両手は血を流すほど擦り剥けていた……

でも彼女は寒さも、痛みも感じなかった。

ただひたすら両手で掘り続け、一秒でも遅れれば東山裕を救えなくなるのではと恐れていた。

しかし、長時間探しても見つからなかった!

「東山裕ー!」海野桜は苦しそうに叫び、地面に膝をつき、声を上げて泣き崩れた。

胸の中は耐え難いほど苦しく、刃物で刺されているかのようだった!

もし東山裕が死んでしまったら、どうすればいいのか分からなかった。

今になってようやく気付いた。前世も今世も、彼のことが気になって、忘れられないのだと。

でも、どうして、やっと二人が結ばれたというのに、こんなことが起きてしまうの?

どうしてこんな突然のことが起きてしまうの?

海野桜は気を失いそうなほど辛く、全身が冷たく硬直していた。

目の前が暗くなりかけた時、突然誰かが喜びの声を上げた!

「見つけました!ここです!」

海野桜は我に返り、驚いて見やった……

消防士たちが大きな石板を持ち上げると、男性の手が現れた。

それは……東山裕の……

海野桜は急いで立ち上がり、よろめきながら這いよって、「東山裕!」

確かに彼だった。彼は地面に伏せたまま意識を失い、生死不明だった。

医師が急いで駆けつけて診察し、喜んで言った。「生きています。急いで病院へ搬送を!」

海野桜はその言葉を聞いて、顔に笑みが浮かんだ瞬間、気を失ってしまった!

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海野桜は悪夢を見た。

夢の中で東山裕は死んでしまい、彼女は心が引き裂かれるほど泣き、死にそうなほど辛かった。

目尻から涙が止めどなく流れ、海野桜は悪夢から急に目を覚ました!

「東山裕ー!」思わず叫び声を上げた。

「桜、目が覚めたのか!」ずっとベッドの傍で見守っていた浜田統介は彼女が目覚めたのを見て、とても喜んだ。「やっと目を覚ましたのだね!」

海野桜は茫然と彼を見つめ、瞬時に気を失う前の出来事を思い出した。