第265章 あなたには私がいるから

東山裕は少し意外に思った。「彼女がそう要求したの?」

「うん」

「彼女がそう言うように頼んだのか?」東山裕は途端に不機嫌になった。

海野桜は彼が案の定怒っているのを見て、淡々と言った。「断ってもいいのよ。それに、橋本友香の家賃のことも考えたわ。私が払うから、立て替えたことにして。すぐにお金を振り込むわ」

東山裕は顔色を変え、さらに不機嫌そうに言った。「なぜ家賃を払うんだ?何だ、この程度の金額を気にすると思ったのか?」

「違うの」海野桜は説明した。「橋本友香は私の友達だから、私が助けたいの。あなたが助ける必要はないわ」

「なぜ私が彼女を助けているか、分からないのか?」東山裕は暗い眼差しで彼女をじっと見つめた。「それとも、私の好意を一切受け入れたくないのか?」

海野桜は目を揺らめかせた。「ただ、あなたに甘える必要はないと思って...」

「甘えるだって?海野桜、なぜそんなにはっきり線を引くんだ?私を何だと思っているんだ?」東山裕の口調はますます暗くなった。「それとも、本当は私と一緒にいたくないのか?!」

海野桜は眉をひそめた。「そういう意味じゃないわ。勝手な推測はしないで!」

「そうなら、なぜそんなにはっきり線を引くんだ?私のものは君のものじゃないのか?」

「でも...」

「海野桜、君のためならどんなに尽くしても私は喜んでするんだ!」

「...」海野桜は少し驚き、言葉を失った。

心の中で、少し感動した。

東山裕は彼女の手を握り、低い声で言った。「君に私を頼ってほしい。思う存分頼ってほしいんだ。だから君の友達のために何かすることさえ、私は嬉しいんだ」

海野桜は本当に、彼がそんな風に考えているとは思わなかった。

でも...

「そんな風に言って、私が無理な要求をしても怖くないの?」彼女は試すように聞いた。

東山裕は口元を緩めて微笑んだ。「どんなに多くても構わない。むしろ何も言わないことの方が怖いよ!」

「じゃあさっきは...」

「さっきは何だ?」

海野桜は躊躇いながら言った。「浜田碧のことを話した時、怒ってたでしょう。不機嫌だと思ったわ」