第304章 また東山裕の妻になった

東山裕は急に立ち止まった。

心の中は興奮と信じがたい気持ちでいっぱいだった。

彼女が承諾する可能性が高いと予想していたものの、それでも不安で、断られるのではないかと恐れていた。

ついに彼女の答えを聞いた今、東山裕は全てが報われたと感じた!

「おじいさんの件は、すぐに取り下げさせる。今日から、家に戻って一緒に住もう!」そう言うと、東山裕は即座に立ち去った。

彼は内心の興奮を見透かされるのが怖かった。あまりに恥ずかしい思いをしたくなかったのだ……

海野桜は彼が去っていくのを見送り、そして暗い瞳を伏せた。

ちょうど病院に駆けつけてきた浜田碧は、彼らの会話を聞いていた。

「本当に彼と再婚する気なの?」浜田碧は我慢できずに尋ねた。

海野桜は彼女を一瞥し、頷いた。「ええ」

「本当に大丈夫?」浜田碧は眉を上げた。「愛のない結婚に幸せはないわよ!」

海野桜は淡く笑った。「私にとって、それは全て重要じゃないの」

おじいさんの安全だけが、彼女にとって最も重要なことだった。

浜田碧は海野桜の偉大さに驚いた。もし自分だったら、誰のためでも、何のためでも自分を犠牲にすることは絶対にないだろうから!

しかし、確かに彼女たちは違う。

海野桜はおじいさんに育てられた。おじいさんが彼女にとってどれほど重要か、言うまでもない。

……

海野桜は病院に長く留まり、おじいさんが本当に大丈夫だと確認できてようやく安心した。

空はすでに暗くなり、張本家政婦も病院に来ていた。

「お嬢様、あなたの荷物は全て片付けておきました。東山坊様も既に全て運ばせました」

海野桜は頷いた。「分かったわ」

「それと……」張本家政婦は躊躇いながら言った。「迎えの者も来ています。下で待っています」

海野桜は気が進まなくても、約束は守らなければならなかった。

彼女は立ち上がって言った。「張本さん、おじいさんのことをよろしくお願いします。私は先に行きます」

張本家政婦は頷いた。「ご心配なく、ご主人様のことはしっかりお世話させていただきます」

「ありがとう」海野桜は彼女を抱きしめ、そして決然と立ち去った。

病院の入り口に着くと、豪華なリンカーンが停まっているのが見えた。

運転手は恭しく車のドアを開け、「若奥様、どうぞお乗りください」

今日から、彼女は再び東山裕の妻となる。