海野桜は軽蔑的に笑った。「トイレに行っただけよ。吐き気がしたから!」
東山裕「……」
海野桜の去っていく後ろ姿を見つめながら、東山裕の目が暗くなった。
同時に後悔の念も感じていた。
さっき、自分は何を言っていたんだ?!
明らかにあれは本心ではなかったのに、どうしても制御できずに口に出してしまった。
これで、海野桜は彼のことをもっと嫌いになっただろう。
でも嫌われるのも、何の感情も持たれないよりはましだ……
東山裕は自分に言い聞かせるように考えた。
海野桜は今、確かに彼のことが大嫌いだった。
わざと洗面所で長居をして出てきたのに、廊下で人とぶつかってしまった!
「すみません!」海野桜は慌てて謝った。
相手は女性で、軽く目を上げて「大丈夫……です……」
女性は海野桜の姿を見るなり、少し戸惑ったような表情を見せた。