第310章 身内の人には礼儀は不要

海野桜は軽蔑的に笑った。「トイレに行っただけよ。吐き気がしたから!」

東山裕「……」

海野桜の去っていく後ろ姿を見つめながら、東山裕の目が暗くなった。

同時に後悔の念も感じていた。

さっき、自分は何を言っていたんだ?!

明らかにあれは本心ではなかったのに、どうしても制御できずに口に出してしまった。

これで、海野桜は彼のことをもっと嫌いになっただろう。

でも嫌われるのも、何の感情も持たれないよりはましだ……

東山裕は自分に言い聞かせるように考えた。

海野桜は今、確かに彼のことが大嫌いだった。

わざと洗面所で長居をして出てきたのに、廊下で人とぶつかってしまった!

「すみません!」海野桜は慌てて謝った。

相手は女性で、軽く目を上げて「大丈夫……です……」

女性は海野桜の姿を見るなり、少し戸惑ったような表情を見せた。