第309章 まるで大魔王のように

彼女がこうしてくれて、東山裕は一時的に満足していた。

かつての彼は、彼女に対してもっと冷淡で、もっと酷い態度をとっていたのだから。

そんな彼のことを、彼女は耐えることができた。だから、こんな彼女のことを、彼も当然耐えられるはずだ。

いや、たとえ彼女が本当に彼に対して酷くても、彼は耐えられる……

それよりも、彼女が見えなくなることの方が怖いから。

彼女が見えなくなったら、彼は狂ってしまうだろう……

もし彼女への愛がこれほどまでに深まることを知っていたら、最初から真相を突き止めるのに別の方法を選んでいたかもしれない。

しかし、彼女を傷つけることで、自分がより深く落ちていくとは知るよしもなかった。まるで永遠に抜け出せないかのように。

東山裕は海野桜を見つめながら、突然呼吸が痛くなるのを感じた。