「おじいちゃん、今日の調子はどう?良くなった?」海野桜はベッドの傍らに寄って心配そうに尋ねた。
浜田統介は笑って言った。「だいぶ良くなったよ。心配することはないよ。」
おじいさんの顔色は確かに良くなっており、海野桜は心から嬉しく思った。
二人は他の話題には触れず、日常的な会話を交わし、海野桜は彼の食事の世話もした。
気がつけば30分以上が経過していた。海野桜はおじいちゃんとの会話を楽しみ、離れがたい気持ちだった。
しかし東山裕から電話がかかってきて、早く降りてくるように催促された。
「分かったわ、すぐに行くから。」
海野桜が携帯を仕舞うと、浜田統介は尋ねた。「裕からか?」
「うん。」海野桜は頷いた。
浜田統介は深く考えながら言った。「桜、おじいちゃんは今でもお前たちが一緒になることに賛成できないんだ。お前が気にしないと言っても、自分の幸せを諦めてはいけない。東山裕と一緒では、幸せにはなれないよ。」
海野桜は気にしない様子で笑った。「おじいちゃん、今の私は十分幸せよ。じゃあ、私行くね。ゆっくり休んでください。明日また来ます。」
浜田統介は彼女の頑固さを見て、ため息をつくしかなかった。
しかし、より強く感じたのは自責の念だった。すべては自分がこの子を巻き込んでしまったせいだ……
海野桜はそれ以上長居せずに、下へ降りていった。
車に乗り込むと、東山裕は彼女を一瞥して、気遣うように尋ねた。「おじいさんの具合はどう?」
海野桜は彼の気遣いが本物か偽物か判断できなかったが、素直に答えた。「今日はだいぶ良くなったわ。」
「それは良かった。」東山裕はそれ以上何も言わず、車を発進させて帰路についた。
海野桜は道中ずっと、30年以上前のあの事件のことを考えていた。
彼女は我慢できずに東山裕に尋ねた。「おじいちゃんは当時、どうやってあなたたちを陥れたの?」
東山裕の瞳が微かに揺れた。「私もよく分からない。ただの濡れ衣だったようだ。」
「じゃあ、どうやって疑いが晴れたの?」
「私たちの潔白を証明できる証拠が見つかって、以前の証拠が全て偽物だったことが証明されたんだ。」
この事件は聞いた限りではとてもシンプルに思える……
でも……
海野桜は心の中の疑問を口にせずにはいられなかった。「おじいちゃんはどうしてそんなことをしたの?」