第312章 彼らは苦難を共にした

東山裕は長い間彼女を抱きしめていたが、やっと離して、彼女の乱れた髪を整えながら笑って言った。「行きなさい、遅刻しないように!」

海野桜はすぐに時計を見た……

くそっ、もう遅刻しそう!

彼女は急いで車のドアを開けて、学校の中へ走り込んだ。

東山裕は彼女の後ろ姿を見て、思わず笑みがこぼれた。実は彼は意図的にそうしたのだ。彼女をからかって、感情の起伏を見たかったのだ。

こうしていた方が、彼女が冷たくしているよりはましだ……

海野桜は小走りで、ぎりぎりのタイミングで教室に入った。

彼女は前列の隅に座る場所を見つけたが、すぐに誰かが隣に座った。

海野桜は横を向いて、一瞬驚いた。

隣に座った高遠隆行は友好的な笑顔を見せて言った。「海野さん、どうして今日から授業に来たの?」

海野桜はただ淡々と答えた。「家で少し用事があって遅れました。」