第323章 あなたがまだいてくれて嬉しい

「はい、坊ちゃま」

車はすぐに海辺を離れ、朝日がようやく地平線から昇り始めていた。

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海野桜もほとんど一晩中休んでいなかった。

夜が明けるとすぐに起き上がり、歯を磨いて顔を洗った。

服を着替えて、カバンを背負って出かけようとした時、寝室のドアが突然開かれた——

彼女はそこで戻ってきたばかりの東山裕とばったり出くわした。

男は彼女を見て、はっとして立ち止まった！

海野桜も一瞬驚いたが、すぐに我に返り、彼を避けて立ち去ろうとした。

東山裕は無意識に足を動かし、ドアを塞いだ。

海野桜は淡々と目を上げ、「邪魔です。学校に行かなければなりません」

「君が出て行ったと思っていた」東山裕は彼女を見つめ、声は低く掠れ、まるで深い海のような深い眼差しで。

海野桜は彼と目を合わせず、「私たちには取引があります。あなたの許可なく、勝手に約束を破るつもりはありません」

突然そう言われ、東山裕の心は、まるで蘇ったかのように、ついに生き生きと鼓動し始めた……

彼は彼女を深く見つめ、喉仏を動かしながら、「たとえ私を憎んでいても、二度と会いたくないと思っていても、出て行かないのか？」

海野桜は頷いた：「はい。あなたが同意しない限り……」

彼女の言葉が終わらないうちに、東山裕は彼女を強く抱きしめた！

海野桜は少し驚いて……

東山裕は彼女をきつく抱きしめ、彼女の香りを深く吸い込んだ。

「海野桜、俺は一生お前を手放すことはない！」彼は思わず言った。

本来なら、戻ってくる前は彼女を手放すことを固く決意していた。

しかし、さっき彼女がまだいることを知った瞬間、すぐに考えを改めた。完全に、そして嬉しく。

でも……

彼が嬉しければ、彼女は不機嫌になるはずだ。

しかし、もうそんなことは気にしていられなかった！

海野桜は諦めたように一度目を閉じ、相変わらず落ち着いた声で、「もう離してもらえませんか？学校に行かなければなりません」

「離さない！」東山裕は突然子供のように頑固になり、さらに強く彼女を抱きしめた。「海野桜、君がまだいてくれて本当に嬉しい！」

とても嬉しかった。完全に冷たくなかったことが。

彼女が残ったのは単なる取引のためだと分かっていても、それでも嬉しかった。