第321章 お前が仕組んだんだろう

「大丈夫！」海野桜は顔を上げずに、打撲薬を奪い取って、自分で薬を塗り始めた。

東山裕は明らかに彼女の感情が自分に向けられていることを感じ取れた。

自分は何をしたというのか？

「一体どうしたんだ？」彼は低い声で再び尋ねた。この冷戦のような雰囲気に耐えられなかった。

「だから大丈夫だって！」海野桜は素早く薬を塗り終え、携帯を取り出して家の運転手に電話をかけた。「大野おじさん、今迎えに来てもらえる？私は……」

海野桜が住所を言い終わるや否や、東山裕は眉をひそめて彼女の携帯を奪い、電話を切った！

海野桜は冷たく目を上げた。「何をするの？」

「それは俺の台詞だ！」東山裕は怒りを抑えながら言った。「なぜ突然こんな態度なんだ？俺が一体何をしたというんだ？」

海野桜は嘲笑うように笑った。「私はずっとこんな態度じゃない？」

違う……

確かに彼女は常に彼のことを快く思っておらず、冷淡な態度を取っていた。

しかし今は明らかに違う。

道中から、彼女の様子がおかしかったようだ。

東山裕は唇を引き締めて再び尋ねた。「海野桜、一体どうしたんだ？」

海野桜も表情を曇らせた。「何でもないわ。ただあなたに会いたくないだけ！」

「……」

「これからは、もうあなたに会いたくない！」そう言って、海野桜はベッドから降りて立ち去ろうとした。

数歩進んだところで、突然体が引き戻された——

海野桜は東山裕の胸に突っ込まれ、顔を上げると彼の険しく鋭い眼差しと対峙した。

その目には、極限まで抑えられた怒りが潜んでいた！

しかし海野桜の心の中も怒りで満ちていた。

彼女は力いっぱい彼を押しのけ、怒りを爆発させた。「東山裕、もういい加減にして！私の我慢にも限界があるわ。もう私を傷つけるのはやめてくれない？！できないなら、いっそ本当に私を殺してよ！」

東山裕は愕然とし、さらに冷たい雰囲気になった。「殺す？」

「そう、本当に殺せるものなら殺してよ！」

東山裕の目が動き、彼女の考えを察したようだった。「今日の事故は俺が仕組んだと思っているのか？」

海野桜は冷笑した。「違うっていうの？」

東山裕は衝撃を受けた。「まさか俺を疑っているのか？！」

「疑わない理由なんてあるの？とっくに疑うべきだったわ。東山裕、まさかあなたがこんな卑劣な人だとは思わなかった。本当に思わなかった！」