第325章 悟りを開いて……

しかし、彼らの間には多くの問題が存在していた。

橋本友香は繊細に尋ねた。「桜ちゃん、彼の家族は絶対にあなたたちの関係に反対しているでしょう?」

海野桜は頷いた。「うん。」

「そして、あなたは本当に彼に心を傷つけられて、もう素直に受け入れられないのね?」

海野桜は心の内を言い当てられ、思わず目が揺れた。

彼女は頷いた。「その通りよ。私は彼と一緒にいることはできるけど、心から愛することは、もうできないと思う。」

橋本友香は理解を示すように頷いた。「分かるわ、狼少年の話のように。もう彼を信じられなくなって、いつまた傷つけられるか怖いのね。」

確かにそうだった。重要なのは、前世と今世の痛ましい教訓が、東山裕が冷血になると恐ろしいということを明確に教えてくれたことだ。

前世では、彼女が死ぬまで彼は無情なままで、彼女の死を待って即座に林馨と結婚しようとしていた。

それだけでも、彼の無情さの恐ろしさを物語っている。

今世では彼に何度も感動させられ、心の中では落ち着かない、不安なのに、それでも彼を信じることを選んだ。

前世の彼と今世の彼は違うと思っていた。

彼は本気で、本当に私のことを大切にしてくれると思っていた。

でも結果はどうだった?また彼の無情さを目の当たりにしたのだ!

今また彼は私を感動させようとしている……

同じことを一度やって、効果があったかもしれない。でも今回は、簡単には心が揺らがない。

それに、何度も彼女を殺そうとした人が彼なのかどうか、まだ確信が持てない。

彼女の周りにはまだ陰謀が存在し、その陰謀が消えない限り、彼を完全に信頼することはできない!

そう、彼を信頼する勇気もないし、もうその気もない。

彼を信頼する必要なんてない、どうせ二人の関係は取引に過ぎないのだから。

馬鹿みたいに彼にまた恋をして、最後に彼が現れて「実は全てが彼らへの復讐だった」なんて言われたくない!

徹底的な復讐だったなんて!

たとえ今彼が本気で、二度と彼女を傷つけないとしても、もう関係ない。

一度は応えたから、二度目はない。

彼が彼女を愛しているのは、彼の勝手。

彼女が彼を愛したくないのも、彼女の勝手。

とにかく今世は、もう恋愛なんてしたくない、ただ穏やかに人生の終わりまで歩みたい。

そう考えると、海野桜の決意はさらに固まった!