第356章 恐ろしい光景

海野桜の眼差しも複雑だった。

彼女はこのような光景を目にするとは思わなかった。

広い寝室には家具が少なく、ほとんどクローゼットと大きなベッドしかなかった。

東山裕は大きなベッドの上で丸くなっていた。

しかし……

周りの壁には、ある女性の肖像画がびっしりと貼られていた。床にも散らばっていた。

部屋全体が女性の肖像画で埋め尽くされていた!

一枚一枚の肖像画に描かれた女性の表情は、それぞれ異なっていた。

怒っている顔、嬉しそうな顔、眠っている姿、食事をしている姿……

無数の肖像画に描かれているのは一人だけ、それは海野桜だった!

海野桜は衝撃を受けた。こんな光景を目にするとは思ってもみなかった。まるで恐ろしい光景だった……

そう、恐ろしく、心が重くなるような光景だった。

医者は東山裕に注射を打ち、点滴を付けて帰っていった。

海野桜はその場を離れられなかった。足が動かず、視線もこれらの肖像画から離すことができなかった。

一枚一枚の肖像画を見つめながら、海野桜は東山裕が描くたびに込めた愛と憎しみを感じ取ることができた。

彼の愛と憎しみを鮮明に感じ取れたのは、それらが全て肖像画に染み込んでいたからだ。

それぞれの肖像画に込められた感情に、彼女は衝撃を受けた……

海野桜は眠る東山裕を見つめながら、本当にそこまで未練があるのかと尋ねたくなった。

なぜかわからないが、海野桜は前世の自分のことを思い出した。

あの時、彼女も自分に問い続けていた。なぜ諦められないのかと。

諦められたらいいのに、そうすれば苦しまなくて済むのに。でも、それができなかった……

……

海野桜はベッドの端に座り、あれこれと考えながら点滴の液体を見守っていた。

いつの間にか時が過ぎ、夜が明けようとしていた。

海野桜もついに耐えきれず、ベッドサイドテーブルに手をついたまま、うとうとと眠りに落ちた。

東山裕がゆっくりと目を開けると、彼女の寝顔が目に入った。

彼は一瞬固まり、夢を見ているのかと思った!

なぜ海野桜がここにいるのか?

東山裕は思わず息を殺し、彼女から目を離さずにじっと見つめた。少しでも気を抜けば、この夢が覚めてしまうのではないかと恐れて。

この夢は、毎晩見る夢よりもリアルだった。