第355章 彼は同情に値しない

彼女はもう二度と彼に会いたくなかった。

でも、まだ修理代を払わなければならなかった。

海野桜はすぐに銀行カードを取り出した。中には丁度100万円が入っていて、今朝特別に彼への賠償金として振り込んでおいたものだった。

車のキーと銀行カードを一緒に彼に渡して、もう二度と会わないつもりだった!

海野桜は引き返し、すぐに上階に着いた。彼女は必死にインターホンを押したが、しばらく押し続けても誰も出てこなかった。

東山裕はわざと開けないのか、それとも中で死んでいるのか?

海野桜は誓った。本当に物を返すだけで、他意は全くないのだと。

そう、彼女は自分でドアを開けた……

暗証番号は、やはり彼女の誕生日だった!

開いた扉を見つめ、海野桜は少し呆然とした。

なぜ彼女の誕生日を暗証番号にしているのか、東山裕は彼女のことを嫌っているはずなのに?彼のことが本当に理解できなかった。