東山裕もそれを察したのか、すんなりと道を譲った。
海野桜は運転席に座り、パンと水を彼に投げ渡した。「やっぱり少し食べたほうがいいわよ!」
そう言うと彼を見ることもなく、車を発進させた。彼が食べるかどうかは、もう彼女にはどうしようもなかった。
とにかく、言うべきことは全て言った。
東山裕は彼女を一瞥し、ミネラルウォーターを取って数口飲んだ。
パンを食べなかったのは、わざと食べないのではなく、本当に食べる気がしなかったからだ。胃があまりにも痛く、食べると具合が悪くなる。
それに、彼はもうこれに慣れていた。この苦痛なしでは生きていけないとも言えるほどだった。
痛みがあるときだけ、自分が生きているという実感が持てた……
そう、彼は異常なほどこの苦痛に執着し、中毒になり、離れられなくなっていた。