海野桜は一瞬驚いて、笑って言った。「私の方こそ光栄です。あなたのお力添えをいただけて」
白川宗助は静かに笑い、その笑顔は清々しく率直で、春風のような心地よさを感じさせた。
「では、今夜はお互いの光栄を大切にしましょう。そして、良い知らせが早く届くことを願っています」
「ありがとうございます」海野桜は微笑んで、彼の腕に手を添えて、一緒に歩き出した。
宴会場のホテルに向かう道中、海野桜は白川宗助から今日会う人物について簡単な説明を聞いた。
その人物は二階堂豊という名で、今日はちょうど70歳の誕生日だった。彼は福岡市のカジノを数軒経営しているだけで、家族もそれほど裕福ではなかった。
しかし、裏では、ほとんど誰も彼に手出しできず、多くの人が彼を畏れていた。
その理由について、白川宗助は海野桜に説明しなかった。しかし海野桜は、二階堂家には他の知られざる勢力があるのだろうと推測できた。
それは彼女が気にすべきことではなく、相手が彼女を助けてくれることだけを願っていた。
白川宗助は、予想外のことがなければ、二階堂豊は彼らを助けてくれるはずだと言った。
彼の確信に満ちた言葉に、海野桜の心はさらに期待に膨らんだ。
すぐに、二人はホテルに到着した。
今夜の二階堂豊の誕生祝いには多くの人が来ており、ホテルはすでに来客で溢れていた。
しかし海野桜は、来ている客の多くが並々ならぬ雰囲気を持っていることに気づいた。彼らの身分が特別高貴というわけではなく、彼女も彼らを知らなかった。
むしろ、彼らの身には、どこか暗い雰囲気が漂っていた……
二階堂豊本人も、暴力団のような雰囲気を醸し出していた。
以前なら、海野桜はこのような人物との接触を避けていただろう。しかし今は状況が違う。おそらく祖父を探すには、闇の勢力に頼るしかないのかもしれなかった。
機会を見計らって、白川宗助は海野桜を連れて二階堂豊の元へ向かった。
二階堂豊は70歳とは思えないほど背筋が伸びており、精気にあふれ、その目は鋭く光を放っていた。
海野桜は彼と一度目が合うと、二度目は見る勇気が出なかった……
「これは白川坊さんではありませんか?」二階堂豊は白川宗助を見て非常に喜び、「白川坊さんが私の誕生祝いに来てくださるとは、この場が輝かしくなりましたよ」