第386章 また彼を好きになってしまった

海野桜が彼が何かするだろうと思った時、突然彼の質問が聞こえた。

「あの時、僕に会いに来ようと思ったことはあるのか?」

「え?」海野桜は一瞬固まり、やっと彼の言葉の意味を理解した。

彼がなぜまたこの話を持ち出したのか、彼女には分からなかった。

東山裕も自分がなぜ尋ねたのか分からなかったが、ずっとその答えを知りたかった。

「あったのか?!」彼は目を黒く光らせながら追及した。まるで目的を達成するまで諦めないかのように。

「……」海野桜の目が揺れた。

彼女は突然どう答えればいいのか分からなくなった。

どう言えばいいのだろう?実は会いに行きたかったけど、おじいちゃんに薬を飲まされて連れて行かれたと告げるべきか?

いや、最初は行きたいと思っていたけど、福岡市を離れた後、その考えは完全に消えていた。

彼との関係を完全に断ち切ることを決意したのだ。

そうでなければ、あの半年間、一度も彼に連絡を取らなかったはずがない。説明の電話一本すらしなかった。

だからあの時、会いに行きたくなかったのだろう……

「あったのか、なかったのか?」東山裕は再び尋ねた。声は低く抑えられ、目にも抑えられた感情が隠されていた。

そして、わずかな期待も……

海野桜は彼を欺くことができず、首を振った。「なかった……」

「……」東山裕の瞳孔が縮み、全身に氷水を浴びせられたかのようだった!

やはりそうだ。彼女が全く会いに来たくなかったことは、とっくに分かっていたはずだった。

彼女が彼に対して完全に心を閉ざしていたことも、とっくに分かっていたはずだった。彼の気持ちなど、もはや彼女には何の意味もない。

自分は自己欺瞞の世界に生きていた。彼女が少しは気にかけてくれているだろうと思い込んでいた。

まだ希望があると思い込んでいた……

実は、もう何の希望もなかったのだ!

東山裕は今、心の中がどんな感じなのか言い表せなかった。まるで最後に残されていた夢まで粉々に砕かれたかのようだった。

もう夢を見る資格すらなくなってしまった。

「海野桜、本当に愛しているという気持ちはもうないのか?」東山裕は苦しそうに尋ねた。

海野桜のまつ毛が震え、何か説明しようとしたが、どう説明すればいいのか分からなかった。