飛行機が離陸する前に、海野桜はニュースを見ていた。
現在、東山の状況はとても良くなく、メディアは東山裕の投獄について大々的に報道していた。
東山の名誉と信用は、すでに深刻な影響を受けていた。
おそらくさらに悪化するだろう……
しかし東山裕はまだ気にしていないような様子だった。
海野桜は彼のこの態度を見て、少し歯がゆく思い、「心配じゃないの?」と尋ねた。
東山裕は彼女の体を抱き寄せ、目を閉じたまま「何を心配する必要がある?心配することなんて何もない」と言った。
「でも今の状況はとても深刻よ……」
「空が落ちてくるわけじゃない」
海野桜は本当に言葉を失った。これはまさに、神様は焦らないのに側近が焦るという状況だ。
彼の胸に寄りかかりながら、彼女はまだ心配していた。「あなたはここまで苦労してきたのに、もし全てが水の泡になったら、とても悲しいわ」
東山裕は彼女の体をしっかりと抱きしめ、しかし満足そうだった。
「でも僕は海野桜を手に入れた。海野桜がいれば、東山を失ったとしても何だというんだ!」
どうせ、彼はすでに最も欲しかったものを手に入れた、それで十分だった。
海野桜はその言葉を聞いて心が動かされたが、少し悲しくもあった。
彼女は彼が東山を失うことを望んでいなかった。なぜならそれは彼の心血であり、彼の帝国でもあったからだ。
しかし彼女は信じていた、彼はきっとこの難局を乗り越える方法を持っているはずだと。
海野桜は東山裕がこれほど楽観的だったからこそ、自分も楽観的になれたのだ。
しかし福岡市に着いてから、彼女は事態の深刻さを知ることになった!
飛行機を降りるとすぐに、東山裕は人を手配して彼女を別の通路から送り出し、彼自身はメディアに一人で対応しに行った!
海野桜は本来、彼と一緒に対応したかったが、彼に拒否された。
彼は彼女を表に出したくなかった、彼女に彼と一緒にこれらの負担を背負わせたくなかったのだ。
海野桜は別荘に送られ、そして気づいた、別荘の周りは警戒で埋め尽くされており、メディアは全く入ってこれないようになっていた。
とにかく今の情勢は、人々に緊張感を与え、嵐の前の静けさのような感じがした。
橋本友香さえも我慢できずに電話をかけてきた。
「桜ちゃん、この二日間どこに行ってたの?電話も繋がらなかったけど、大丈夫?」