誰が知るだろう、東山裕はまったく気にせず、口元を上げて笑いながら言った。「その通り、私の幸運だ」
来栖研吾は少し驚き、そして彼は理解した。東山裕は本当に海野桜のことが好きなのだと。
そうでなければ、彼のような人間がこんな言葉を口にするはずがない。
だからこそ、あの時彼が浜田家のためにあれほど必死になったのも無理はない。
来栖研吾はもう少し彼らと話した後、立ち上がって帰ろうとした。
海野桜は急いで言った。「来栖兄、食事をしてから帰りませんか。もうすぐ昼食の時間です」
浜田統介も引き留めた。「研吾よ、君は長い間私の世話をしてくれただけでなく、私を家まで送り届けてくれた。私はまだ君に十分な感謝もしていないのに、せめて食事をしてから帰ってくれないか」
来栖研吾は笑いながら断った。「先生、食事は遠慮させていただきます。用事があって、今すぐ出なければならないのです。また機会があれば、改めてお伺いします」