海野桜はおじいさんと離れたくなかった。
彼女は家に残りたかったが、おじいさんと東山裕は二人とも反対した!
そして2対1で、彼女は二人に勝てず、仕方なく東山裕についていくことになった。
ただ、海野桜は何故か少し東山裕に腹を立てていた。
玄関を出るとすぐに、彼女は不満を漏らした。「どうして私が残ることに反対したの?久しぶりにおじいさんに会えたのに、やっと再会できたのに、一晩家に泊まったって何が悪いの?」
東山裕は彼女の手をしっかりと握り、少し嫉妬気味に言った。「僕だって今帰ってきたばかりなのに、どうして僕と一緒にいたいと思わないの?」
「昨晩一緒にいたじゃない?」
「一晩じゃ足りないよ!」東山裕は彼女を横目で見て、「それに君は僕のものだから、ずっと僕のそばにいなければならない」
そう言いながら、彼は頑固な子供のように、コートを開いて彼女を抱きしめた!
海野桜の小さな体は、ほとんど彼に包まれてしまった。
そして彼の体の熱が、彼女の体を温め続けた。
今はもう秋で、天気は寒かった。
海野桜は朝、薄着で出てきたので、外に出た途端に寒さを感じていたが、何も言わなかった。
思いがけず、東山裕はそんなことまで気づいていた……
「暖かい?」東山裕は低くて優しい声で尋ねた。
海野桜の心は、瞬時に暖かい流れが通り過ぎたように、とても温かくなった。
彼女の心の中にあった彼への不満も消えていった。
海野桜は笑いながら頷いた。「暖かいよ。でもどうしてこうして抱きしめるの?早く車に乗った方がいいんじゃない?」
「ただ君を抱きしめたいんだ」東山裕は彼女をさらに強く抱きしめ、顎を彼女の頭の上に乗せた。「こうして永遠に君を抱きしめていたい、二度と離れたくない!」
海野桜は彼の胸に寄りかかり、甘い笑みを浮かべながらも、わざと尋ねた。「飽きないの?」
「僕が不満なのは時間が足りないことだけだよ」東山裕は何かを思い出したように、残念そうに言った。「もし君が12歳の時に僕が君を好きになっていたらよかったのに。そうすれば、もっと長い時間君を愛することができたし、君もあんなに傷つくこともなかったし、また……」
ここまで言って、東山裕は言葉を続けられなくなった。
海野桜には見えなかったが、彼の目には深い痛みが走った。
海野桜の気持ちも同じように複雑だった。