第5章 - 昔のように

黒いロールスロイスの中で、サブリナはお気に入りの曲を聴いていたが、隣の男に何度も邪魔をされていた。「なぜ最後に彼のもとを去る勇気が出たのか、そして、なぜ俺が彼を殴るのを止めたのか、教えてくれ」

サブリナは凍りついたように、彼をもう一度信頼できるかどうか考えていた。デビンは彼女の異父兄だった。母親は同じだが、父親が違う。二人の女の子の中で唯一の男の子だったため、彼は父親のファッションデザイン会社を相続し、会社を新たな高みへと導いた。デビンはいつもサブリナを可愛がっており、ロビンとの結婚に反対していた。そのため、サブリナは話すことを躊躇していた。

「彼は妊婦を家に連れてきて、私たちと一緒に住まわせようとしたの。その子の父親が彼だから、私にその女性の面倒を見るように言ったの」彼女はゼイラの身元については言及しなかった。デビンが彼女に問題を起こすかもしれないと知っていたからだ。

デビンは怒りでハンドルを叩き、サブリナは衝撃で飛び上がった。「くそったれ野郎め。あいつを殺しておくべきだった」デビンは後悔しながら呪った。異父妹をとても愛していたため、リジーがいても、サブリナなしでは前に進むことが難しかった。

「彼にはその価値もないわ」サブリナはため息をつき、ハンドルの上の彼の手の甲をさすった。スピードを出していなくて良かった。

「まあ、これで良かったよ。でなければ、どうやってお前を取り戻せたかな？」デビンは微笑んだ。妹を再び幸せにしたいと思っていた。サブリナも微笑み返した。これは全てとても懐かしかった。過保護なデビン。彼女は首を振って言った。

「あなたったら、本当にバカね」

「お前はあいつには勿体なさすぎたんだ。俺がちゃんと面倒を見るから、もう二度とあいつのことなんて考えなくていい」デビンは断言した。サブリナは気まずそうに微笑んだ。妊娠のことを彼に告げるべきかどうか迷っていた。

約1時間後、デビンは車を止めた。

「ここはどこ？」サブリナは目の前の高層ビルを見て目を丸くした。医師の確認を得ていない妊娠について、デビンに話す気持ちは失せていた。

「分からないの？行けば分かるよ」

デビンの口角には意味ありげな笑みが浮かんでいて、サブリナの好奇心をそそった。あの笑みを浮かべるときは、いつも何かを企んでいるのだ。これも過去からとても懐かしいもので、彼女はそれを深く恋しく思っていた。

デビンは優雅にサブリナを受付からエレベーターまで案内した。人々は絶えず二人の方を振り返った。エレベーターを降りると、デビンはドアをノックしてから開け、サブリナは涙が出そうになった。

「リジー！！」

エグゼクティブチェアに座っていたスリムな人影が駆け寄ってきて抱きしめたとき、サブリナは叫んだ。抱擁は強く、二人の女性は涙を流していた。デビンは不機嫌そうに、その場に居心地悪そうに立っていた。この感動的な再会で置き去りにされた気分だった。

「三人だぞ」と彼は口を挟み、加わろうとしたが、リジーは彼を押しのけた。

「あっち行って」リジーは冷たく言い、再び姉を見つめた。「あの最低野郎。あなたに何をしたの？」彼女は怒りを爆発させた。

ロビンと女性たちの噂は珍しくなく、誰もが知っていた。サブリナがこの有害な結婚から抜け出すことを拒否していたため、リジーはずっと無力だった。サブリナはオフィスを見回しながら微笑んだ。消えたと思っていた家族の会社は、むしろ成長していた。深いため息をつきながら、思慮深く答えた。

「彼は何もしていないわ、リジー。私が彼を愛してしまった私が愚かだっただけよ」涙が目から溢れ、リジーの心は痛んだ。ロビンを地獄に落としてやりたかったが、彼女のような者には不可能だった。ロビンはまだビジネスの天才で、彼らよりも力を持っていた。

「あなたは彼のせいでたくさんのものを失ったのに、こんな仕打ちをするなんて？」リジーは落胆して首を振った。姉の結婚があまりにも魅力のないものだったため、彼女は誰とも付き合おうとしなかった。心を守る方が、傷つくよりましだった。

「それは全て過去のことよ、リジー。サブリナ・ジェームズは戦士なの」サブリナは誓った。リジーとデビンは彼女が旧姓を使っているのに気付いて、満足げに微笑んだ。ジュエルズ家は彼らにとって死んだも同然だった。

「ママがこの日を見られたらよかったのに」リジーは遠い目をして言った。母は最初の夫を飛行機事故で亡くした後、デビンを産んでから彼らの父と結婚した。リジーが6歳の時、母はがんで亡くなり、父は再婚しなかった。

自然な流れで、デビンは18歳になった時に父の財産を相続した。彼は家族に対して非常に寛大で、リジーとサブリナを過度に保護していた。それでも、リジーは彼がサブリナをより愛していると感じていた。それは実際にその通りだった。サブリナはリジーの前に最初の妹だったので、自然と絆が深まり、リジーでさえもその間に入ることはできなかった。

「母さんはどこかで私たちを見守っていると信じているよ」デビンは悲しげな表情で姉妹を抱きしめた。母をとても愛していたが、あまりにも早く亡くなってしまった。

「それでパパは？」サブリナは期待を込めて尋ねた。感情が定まらなかった。父が自分の帰還をどう感じるか分からなかったが、埋め合わせる準備はできていた。

「会社の重要なクライアントとミーティング中だよ」

サブリナは途方に暮れた。最後に覚えているのは、家族のビジネスが小規模だったことと、ロビンの父が事業拡大を手伝うために、父が彼女とロビンの結婚を強制したことだった。今や、ロビンの父が亡くなる前にビジネス契約を解消した後、想像以上に大きくなっていた。

「どうしてこうなったの？会社は売却されたはずよ」

リジーは微笑んだ。「そうね、パパがあなたにロビンから離れるように言う前にそうしたの。ロビンが権利を主張しに来ることを恐れて、パパは会社を倒産させて売りに出したの。それからデビンの名義で買い戻したの。デビンが亡き父の姓を使っているのが幸いだったわ」

サブリナはずっと頷いていて、安堵を感じた。ロビンはこの会社の存在さえ知らないのだから、決して権利を主張することはできないだろう。「本当に良かった。心配だったわ」

「ええ。JCミネラルズは思っている以上に順調よ」リジーは確信を持って言った。彼女はもっと話そうとしたが、デビンが遮った。

「ブリナ、朝食は食べた？」彼は心配そうに尋ねた。サブリナに食欲がないかもしれないことを知っていた。価値のない元夫のせいで彼女を飢えさせるつもりはなかった。サブリナが2年ぶりに昨夜彼に電話をかけてきた時、何かが起こったのだろうと予想していた。そして実際にその通りだった。

「いいえ」サブリナは正直に答えた。単に食欲がなかった。

「じゃあ、カフェテリアでブランチを食べましょう」リジーが提案した。コーヒーを3杯も飲んでいたので、何か食べる必要があった。しかしデビンにはもっと良いアイデアがあった。

「いや、二人を俺のお気に入りのレストランに連れて行くよ」

リジーは目を転がして尋ねた。「最低でも一皿2000ドルするところ？なんて無駄遣い？」

「失った妹を取り戻した記念だよ」デビンは肩をすくめた。お金を持っていて、さらに稼いでいるのだから、なぜ使わないのか？お金とはそのためにあるのだ。

「あなたが払うなら、食べるわ」リジーは肩をすくめて、再び姉を賞賛の目で見つめた。サブリナと再会できて本当に嬉しかった。三人がレストランに到着し、サブリナがメニューを見た時、彼女は青ざめた。

「高すぎないかしら？」

「可愛い妹のためなら何も高すぎることはないよ」デビンは自慢げに言い、ウェイターに手を振った。リジーは不満げな表情を浮かべた。サブリナが戻ってきた今、以前のように彼女一人でデビンを独占することはできないことが分かっていた。

「あなたがいない間、私が面倒を見てたのに」

「そして今は彼女が戻ってきたんだ」デビンはからかい、リジーは笑った。膀胱が一杯になっているのを感じ、ウェイターが来た時に言った。

「お手洗いに行ってくるわ。でも5番、6番、9番を注文しておいて」

サブリナはごくりと唾を飲み込んだ。妹は大食いになったのか、それともデビンの銀行口座を破産させようとしているのか。「彼を破産させる気？」

「私を無視した罰よ。ブランチに1万5千ドルなんて彼にとっては大したことないわ」リジーは立ち上がりながら言った。彼女はサブリナと同じブロンドの髪をしていた。そして付け加えた。「彼がどれだけお金を持っているか、あなたには想像もつかないわ」そう言って、彼女は急いでトイレに向かった。

サブリナは注文を躊躇していたので、デビンが彼女の好きな料理を注文した。それでも、彼が注文した料理の値段を見て、食べるのを躊躇していた。デビンは不機嫌だった。

サブリナは大富豪のロビンと結婚していたのに、彼の好みには謙虚すぎた。彼は彼女のカトラリーを取り、食べさせ始めた。サブリナは彼が口に運ぶ一口一口を受け入れ、昔彼がこのように食べさせてくれた時のことを思い出していた。今、彼女は自分がどうやってロビンと暮らせたのか不思議に思っていた。彼は決して彼女に注意を向けなかったのに。愛は確かに盲目だった。

その時、背の高い魅力的な人物が女性を連れてレストランに入ってきた。彼の目は辺りを見回し、見覚えのあるシルエットに止まったようだった。彼は躊躇なく、男に食べさせてもらっている彼女が座る優雅なテーブルに急いで向かった。彼の顔は嫌悪感で歪み、怒鳴った。

「サブリナ・ジュエル、男と一緒にここで何をしている？そしてあなたの夫のロビンはどこだ？」