妊娠の噂はこうして始まった

「ごめんね、愛しい人。何年もこの機会を待っていたから、自分のことばかり考えてしまった。大丈夫、あなたが元気になったらまたしましょう」

トリスタンは優しく彼女の額にキスをして、抱きしめた。

「大丈夫よ」ベラは彼の言葉を聞いて申し訳なく感じた。ジェフリーが言っていたことを急に思い出した。トリスタンは彼女が戻ってくるまで他の女性を探す気が全くなかったこと、そして周りの人々は、彼がこのまま女性を避け続けるなら修道士になってしまうのではないかと思っていたことを。

トリスタンは彼女の言葉を聞いて溜息をついた。彼女の体調が弱っていることを忘れていた自分を責め続けていた。なんて愚かなんだ。

トリスタンの表情が暗くなるのを見て、ベラは急いで彼の気分を明るくしようと続けた。

「旦那様、足は痛くて疲れているけど、私も楽しかったわ」ベラは言った。彼の笑顔が咲くのを見て安心した。

妻が愛し合うことを楽しんでいたと聞いて、トリスタンの目は輝いた。しかし、その幸せは冷静な判断力を裏切るようで、彼の手は彼女の腹部に触れ始め、ゆっくりと彼の手のひらにぴったりと収まる、それほど大きくない胸へと這い上がっていった。

「ト、トリスタン、んん...」ベラは彼の温かい手が胸を揉みしだくのを感じて喘いだ。彼の親指が硬くなった乳首を弄ぶと、彼女の体は弓なりに反った。「な、何してるの、トリスタン!?もう求めないって言ったじゃない!?」彼女は彼を止めようとした。

「妻よ、もう一度しよう―」

もう!

『シンクレアさん、あなたって本当に恥知らずね』彼女は心の中で不満を吐き出した。

ベラが彼を叱りつけようとする前に、突然ドアから柔らかいノックの音が聞こえ、トリスタンの手を止めさせた。

二人ともドアの方を好奇心に満ちた目で見つめた。

その後、ベラはトリスタンに視線を移した。

「ダックスかしら?」彼女は囁いた。心配そうな声には恐れが隠せていなかった。二人はまだ裸で、服は床に散らばったままだった。今の状態を息子に見られたら何と思うだろう?

「誰だ!?」トリスタンは冷静に尋ねたが、その声色には今邪魔されたくないという意思が明確に表れていた。