011 お茶の達人

「でも、私たちはしばらく一緒に生活しなければならないのに、お二人のそういう態度はふさわしくないと思います」

他の人は小島一馬を怒らせることを恐れていたが、新進気鋭のスター矢野常は恐れていなかった。心配はしていても、面子のために引き下がるわけにはいかなかった。それに、彼の言っていることは何の問題もなかった。小島一馬が法律も秩序も無視できるとは思えなかった。

「矢野スター、そういう言い方は間違っていますよ。番組で見せるべきは本当の自分です。性格が合えば自然と皆が仲良くなれますし、合わなければ無理する必要はありません。カメラの前で視聴者を騙す必要がありますか?」

矢崎粟は口を押さえて笑い、続けて言った。「私の演技力では難しいかもしれません。でも、スターの方なら、あなたの演技力で視聴者に気づかれることは絶対にないでしょう。番組が終わった後も、うまく演じ続けられることを願っています」

矢崎粟の数言に、矢野常は返す言葉を失った。

実際、このような番組では、みんな多かれ少なかれ演技をしながら撮影している。心の中でどんなに嫌いでも、番組では仲良く振る舞える。演技をしたくない人がいても、矢崎粟のようにはっきりと表現する人はいない。

林監督は矢崎粟を止めなかった。彼もまた、矢崎粟のこの言葉を通じて、この番組がセレブの最も真実の生活を記録するものだと大衆に伝えたかった。そうすれば、評判も話題性も獲得できる。

「あなたは理不尽だ」矢野常は長い間我慢して、やっとこの一言を吐き出した。

結局、反論できなかった。反論すれば視聴者を騙していることを認めることになるからだ。

「素直に自分らしくありたい人を非難するなんて、誰が理不尽なのかわからないね」小島一馬が再び味方をした。

矢崎粟は心の中で彼に賛同し、密かに頷いた。小島一馬という人物は、なかなかいい。

「もう争うのはやめましょう。私が悪かったんです。私が分別がなかった。これからはそんな親しげな呼び方はしません」矢崎美緒は矢野常の表情が悪いのを見て、また白蓮の如き演技を始めた。

白い手を緊張と後悔するかのように白いドレスを掴み、二本の指を不安そうにもじもじさせ、顔には申し訳なさそうな表情を浮かべ、目は少し赤くなっていた。

矢崎粟は心の中で呆れた。矢崎美緒のこの、いつでもどこでも涙を出せる能力には本当に感心する。まるで神業のようだ。

「演技くさい」

矢崎粟が目を転がしていると、小島一馬の控えめな声が耳に入ってきて、思わず笑いそうになった。

その声は、矢崎美緒を含む現場の全員が聞こえていた。矢崎美緒は一瞬その場で固まってしまった。

矢野常は矢崎美緒が傷ついたのを見て、彼女を庇おうとしたが、その時監督は出演者たちが本当に喧嘩を始めることを心配して、急いで場を取り繕った。

「はい、皆さんが揃ったところで、ルールを説明させていただきます」

「先ほど皆さんの携帯電話は預かりました。七日後にお返しします。今日は田園の素晴らしい時間を心ゆくまでお楽しみください」

監督は拡声器を持って、皆に向かって話し始めた。

「この七日間の生活場所は、この山の向こうにある小さな村です。皆さんは自力でこの山を越えて村に入らなければなりません。制作チームからの援助はありません」

「また、村では今晩の夕食の食材を用意してありますが、数に限りがあります。一人につき最大二種類の食材しか受け取れません。先着順です。最後に到着した人は、今晩の調理用の食材がない可能性もあります」

「もちろん、個人で行動するか、チームを組んで豪華な夕食を得るかは自由です。ただし、用意した野菜や肉は全て一人分の量だということを覚えておいてください。どう選択するかは皆さん次第です。何か質問はありますか?」

林監督は素早くルールを説明し終え、皆を見渡した。

矢崎粟には特に質問はなく、どうやって早く村に着けるかを真剣に考えていた。やはり食べ物は重要だ。

「林監督、私たちの通信機器とお財布はスタッフに預かられましたが、この状況で、どうやって交通手段を見つけて村に行けばいいんですか?まさか歩いて行けということですか」岡田淳は矢崎美緒の腕を組みながら尋ねた。

番組に来る前は、ただ都会から離れて、環境があまり良くない田舎で生活するだけだと思っていた。今になって自分で村まで行く方法を考えなければならないなんて。制作チームには車があるのに、使わせてくれないなんて。

「仕方ありません。本当に交通手段が見つからなければ、歩くしかありませんね。だから皆さん、頑張って助けてくれる人を探してください」

岡田淳は目を天に向けて転がした。彼女は監督に励ましてほしかったわけではない。制作チームの車で送ってほしかったのだ。