013 チーム結成

矢崎粟の三人はおばさんの息子のトラクターの荷台に乗り込んだ。三人の他に、後ろには先ほど積み込まれたスイカがあり、手押し車はトラクターの後ろにロープでしっかりと縛り付けられていた。

矢崎粟は車に乗り込むと、ほっと一息ついた。

おばさんを見た瞬間、彼女はこれが番組側のテストだと推測したが、自分の推測が間違っているかもしれないという不安もあった。一人なら良かったのだが、森田輝と小島一馬も一緒に残ってしまった。

もし本当に困っている女性だったら、他人の時間を無駄にして食事もできなくなってしまう。そうなれば大変な罪になってしまう。

先ほどのおばさんの見事な演技は、本当に自分の判断が間違っていたのではないかと思わせたが、年配の女性を一人で車を押させるわけにもいかず、幸い賭けは当たった。

彼らが坂を上がったところで、おばさんの息子がちょうど現れた。間違いなく番組側の手配だったのだ。

トラクターの速度は遅く見えたが、歩くよりはずっと速く、すぐに道具を見つけられなかった伊藤卓に追いついた。

トラクターが通り過ぎる瞬間、伊藤卓は状況を理解し、後悔したが、皆に乗せてもらうのは気が引けた。しかし、番組側の意図は理解できた。

一方、矢野常は暗くなっていく空を見て、焦りを感じていた。

岡田淳は番組側と話がまとまらなかったが、一歩も動こうとしなかった。矢野常は内心呆れていた。こんな人を番組に出すなんて、事務所は彼女を売り出そうとしているのか、それとも潰そうとしているのか。

彼は目配せで矢崎美緒に、岡田淳を説得してほしいと伝えようとした。

「淳、監督を困らせないで。これはルールなの。小島一馬たちはもう随分前に出発したわ。もう着いているかもしれないわ。私たちも早く出発しましょう。」

岡田淳はそれを聞いて口を尖らせた。実は彼女も不安だった。監督は言うだけだと思っていたが、少し彼女たちの苦労するシーンを撮るだけで済むと思っていた。しかし、林監督が本当に一切妥協しないとは思わなかった。

しかし、このまま受け入れるのは面子が立たず、そのためずっと膠着状態が続いていた。

「わかったわ、わかったわ。行けばいいでしょう。」この時、矢崎美緒が台詞を与えてくれたので、彼女もそれに乗じて譲歩したが、それでも林監督に尋ねずにはいられなかった。「ここからどのくらいの距離で、どのくらい歩くの?」

「4キロほどです。早く歩けば1時間ちょっとで着きますよ。」

その言葉を聞いて、岡田淳は転びそうになったが、急いで出発せざるを得なかった。

矢崎粟たちはトラクターに乗り、夕風に吹かれながら、すぐに村に到着した。

統一された様式の家々が整然と立ち並び、煙突からゆっくりと立ち上る煙が空へと昇っていく。静かで温かな雰囲気だった。

三人は車を降り、おばさんが無理やり渡してきたスイカを抱えながら、村に張られた番組のの案内板に従って、宿泊場所へと向かった。

道中で見物に来た多くの村人に会い、矢崎粟は友好的に挨拶を交わした。村人たちも優しい笑顔を返してくれた。

このような善意に満ちた場所で、矢崎粟の気分も随分良くなった。

彼らの宿泊場所は、少し年季の入った大きな屋敷だった。中庭には井戸があり、壁際には小さな菜園が開かれていたが、そこの野菜はまだ芽が出たばかりで、明らかに食べごろにはまだ早かった。

そして中庭の中央には、古風な石のテーブルがあり、その上には今夜の食材が置かれていた。

矢崎粟は近づいて確認してみた。トマト、ジャガイモ、米、ほうれん草、青菜、魚、牛肉、豆腐、そして小さな容器に入った食用油があった。

矢崎粟は監督の言葉を思い出した。一人最大二種類まで。目の前の食材を見ると、一人では主食とおかずを両方用意するのは難しそうだった。しかし、全員で分けるには、それぞれの食材の量が明らかに足りない。

つまり番組側は、個人戦も全員での和気あいあいとした協力も望んでいないということだ。

「チームを組みませんか?」矢崎粟は隣の二人に向かって、心からの誘いを投げかけた。

隣の二人はまだ知り合ったばかりだったが、先ほどの様子を見る限り、どちらも悪い人ではなさそうだった。特に森田輝は明るく熱心な性格だった。小島一馬も毒舌なところ以外は特に問題なく、必要な時には責任感も見せていた。彼らとチームを組むのが最良の選択だと思われた。

「もちろん一緒に組むわ。でも私、料理はできないの……」森田輝は快く承諾した。

小島一馬も断らなかった。自分では食材を手に入れても使いこなせないことは分かっていたし、料理を作れる保証もない。矢崎粟たちと組まないとすれば、矢崎美緒のような女と組まなければならないのか?

矢崎美緒が「一馬お兄さん」と甘ったるく呼ぶことを想像しただけで、また鳥肌が立った。

「じゃあ、料理は私が担当します。」矢崎粟は二人が料理できないことを見て取っていた。

三人はテーブルを囲んで相談し、米、食用油、トマト、牛肉、豆腐、ほうれん草を選んだ。