「そうそう、このお米一袋じゃ私たち数人の一食分にしかならないわ。あなたに分けたら私たちは何を食べればいいの?」手を洗って出てきた森田輝が急いで同意した。
会社は彼女に皆と仲良くするように言ったが、道徳的な束縛を受けるわけにもいかない。
「はい、光里、一緒に料理を作りましょう。小島一馬も手伝ってね」これ以上彼らと関わりたくない矢崎粟は、急いで二人を台所に招き入れ、余計な話は一切聞きたくなかった。
岡田淳は三人が全員台所に入るのを見て、地面を強く踏みつけ、魚を一匹持っている伊藤卓に視線を向けた。
実は伊藤卓も矢崎粟たち三人に加わりたかったのだが、矢崎美緒が先に口を開いてしまい、今では彼はどうやって尋ねればいいのか分からなくなっていた。
岡田淳の視線を感じた途端、彼は不吉な予感がした。四人で三個のジャガイモと魚一匹、それに青菜一束では、とても満腹になれない。自分一人で魚一匹を食べた方がいいかもしれない。
そこで岡田淳に向かって気まずく笑いかけ、すぐにその場から姿を消した。
「三人の皆さん、私は魚を一匹持っているんですが、料理の仕方が分からなくて。一緒に作らせてもらえませんか?私は少なめに食べますから」伊藤卓は片付けを終えると、草魚を持って台所に入った。矢崎粟が忙しそうにしていて、小島一馬がかがんで竈の火を見ているのを見て、おそるおそる尋ねた。
「魚はそこに置いて。薪が足りないから、外から薪を抱えて来てちょうだい」矢崎粟は伊藤卓の声を聞いても拒否せず、むしろ遠慮なく共同作業に加わるよう指示した。
矢崎粟の態度に、伊藤卓は気にせず、むしろほっとして、喜んで中庭へ薪を取りに行った。
ご飯の香りとトマト牛バラ肉の匂いが中庭まで漂ってきて、その匂いを嗅いだ矢崎美緒たち三人は黙って唾を飲み込み、心の中は不満でいっぱいだった。
矢崎粟は彼らがどう食べるか、何を食べるかなど気にも留めなかった。
彼女たちは食事を終えると、食器洗いを森田輝に任せた。
これは森田輝自身が望んだことで、彼女は食べるだけで何もしない人になりたくなかった。
全ての片付けが終わる頃には、すっかり日が暮れていた。この家で使われている電球は、一般的な白熱電球ではなく、古い黄色い透明な電球だった。
林監督は中央の建物の入り口で、全員が揃ったのを見て、部屋の割り当てについて説明し始めた。