017 最後の出演者

「私は家では普段からこんなに早く起きているの。早起きすると頭がすっきりして、この時間だけは心を落ち着かせて本を読むことができるの」と矢崎美緒は照れ笑いをしながら言った。

実際は昨日お腹が空いていたことと、ここのベッドがとても硬くて、甘やかされて育った彼女が眠れなかっただけだった。

矢崎粟は心の中で呆れた。この言葉は明らかに視聴者と小島一馬に向けて言ったもので、謙遜しながら自分の優秀さをアピールし、また文学少女というキャラ設定を確立しようとしているのだ。それに、矢野常と怪しい関係があるはずなのに、なぜ小島一馬にも気があるような態度をとるのだろう。

しかし矢崎粟は心の中で文句を言うだけで、実際には反論しなかった。結局、やるべきことは一度か二度でいい。理があっても、今更人のことを言い立てて自分の評判を落とすのは得策ではない。そこで彼女はここを離れ、周りを散策して何か食べ物を探すことにした。

一方、小島一馬は矢崎美緒が自分に近づいてくる中、矢崎粟が離れようとするのを見ていた。そのとき、矢崎美緒が近づくにつれて、かすかな臭いがだんだん強くなってきたので、彼は慌てて大きく後ずさりした。

「近づかないでください。あの、先にシャワーを浴びた方がいいんじゃないですか?」

その言葉が口をついて出た瞬間、矢崎美緒は凍りついたように立ち尽くし、顔が急速に赤くなった。

彼女は素早く頭を下げ、涙が目に溜まったが、実際に泣き出すことはできなかった。

「気にしないでください。僕は鼻が敏感なので」と小島一馬は言った。

昨日の矢崎美緒と岡田淳の争いについて、彼が知らないはずはなかった。矢崎美緒のことは好きではなかったが、彼は根も葉もないことを言う人間ではないし、理由もなく女性を攻撃するような人間でもない。そう言ったということは、肥料の臭いが本当にまだ残っていたということだ。

矢崎粟は必死に笑いを堪えた。小島一馬のこの素直さが彼女はとても気に入っていた。

矢崎美緒は結局耐えきれず、恥ずかしさのあまり部屋に逃げ帰った。

「あなたって本当に女性への思いやりを知らないわね。ファンからの批判が怖くないの?」矢崎粟は笑みを浮かべながら、親切に忠告した。