018 分業協力

林監督の言葉が終わるや否や、庭の外から一人の男性がスタッフの案内で中に入ってきた。

矢崎粟は来訪者を見て少し驚いた。これは彼女の三番目の兄、矢崎若菜ではないか。

矢崎若菜は黒いカジュアルスーツを着て、金縁の眼鏡をかけ、知的な雰囲気を漂わせていた。

矢崎粟は心の中で毒づいた:'インテリぶった悪党'。

矢崎美緒は矢崎若菜を見た瞬間に目を潤ませ、近づく前に彼に飛びついた。矢崎若菜も両腕を広げて彼女をしっかりと抱きしめた。

矢崎美緒は彼の胸の中で小さな声ですすり泣いていた。

「どうしたんだ、美緒、誰かに意地悪されたのか」矢崎若菜は愛する妹がこんな状態なのを見て、胸が痛くなった。空気中の不思議な臭いを無視して、頭を下げて優しく矢崎美緒に尋ねた。

しかし矢崎美緒は彼の胸に甘えたまま何も言わず、ただ首を振り続けた。

彼女のこの様子を見て、矢崎若菜は冷たい視線を矢崎粟に向けた。彼は確信した。きっと矢崎粟がまた嫉妬して、愛する妹をいじめたに違いない。そうでなければ美緒が泣くはずがない。

しかし彼の視線に対して、矢崎粟は気づいていないかのように、小島一馬たち四人と集まって、タスクを分担し、早く水がめを満たして、美味しい食事を楽しもうとしていた。

矢崎若菜の出現に、矢崎粟はほんの一瞬驚いただけだった。前世では矢崎若菜はこの番組に参加していなかったからだ。しかしすぐに理由が分かった。

今世では彼女がこのバラエティ番組の枠を矢崎美緒に譲らなかった。そして矢崎美緒がこの番組に出たがっていたため、矢崎家の人々は当然あらゆる手段を尽くして彼女の望みを叶えようとした。

しかし彼女自身の人気だけでは林監督を説得するには不十分だった。そこで矢崎家は超人気の現役歌手である矢崎若菜を切り札として出した。人気も高く、リアリティショーに出演したことがなかったため、話題性もある。そして彼が矢崎美緒も一緒に連れてくることで、番組に兄妹の話題も作り出せる。林監督もそれを歓迎したのは当然だった。

「えーと、みなさんが揃ったところで、グループ分けをして、タスクを始めましょう。それと一つ注意事項ですが、今日の作業は今日中に終わらせなければなりません。ですので、一つの作業に時間をかけすぎないように。完了できなければ、夜遅くまでかかっても終わらせなければなりませんよ。」