「小島一馬、疲れたら代わってあげるわ。粟ちゃん、持てなくなったら言ってね、少し持ってあげるから」
出発前に伊藤卓は二人に念を押した。この四人チームの中で、彼が一番年上だったが、この二日間は弟や妹たちに世話をされていて、内心バランスが取れていないと感じていた。
矢崎粟は彼の親切な気持ちを理解し、優しく微笑んで頷いた。
そうして三人は水を運び続けた。
いつの間にか、四人の間にも息が合うようになり、動きはどんどん速くなっていった。すぐに空だった水がめは水で満たされた。
四人とも清潔さなど気にせず、直接地面に座り、疲れながらも嬉しそうな表情を浮かべていた。
そして矢崎粟は、小島一馬が何気なく右手をさすり、一瞬痛みに顔をゆがめたのに気付いた。
彼らと比べると、矢崎若菜たちのグループの進捗は少なからず遅れていた。
みんな心の中では急いで作業をしていたが、同じように村人の家の井戸を借りていても、何度か試してもうまくいかず、一杯水を汲んだ後は新しい水が全く出てこなかった。
彼らの四人グループでは、二人の女性は水の入った桶を持ち上げることができず、矢野常と矢崎若菜が一人一桶ずつゆっくりと運ぶしかなかった。しかし、借りている井戸が比較的近かったため、最初は自信に満ちていた。
しかし、水がめが半分も満たされていない時に、矢崎粟たちがすでに地面に座って休んでいるのを見て、その自信は完全に消え去った。
やる気を失い、作業はますます疲れ、ますます遅くなっていった。
彼らが再び戻ってきた時、矢崎粟たちはすでにテーブルを囲んで朝食を食べ始めていた。
肉まん、豆乳、油条、豆腐スープと、種類も豊富で香ばしい匂いが漂っていた。
矢崎若菜は早朝から来ていたため、朝食を食べる時間がなく、この香りを嗅ぐと思わずお腹が鳴ってしまった。
そして、昨夜からほとんど何も食べていない大切な妹の矢崎美緒のことを思い出し、しばらく迷った末、ついに矢崎粟に声をかけた。
「矢崎粟、お前たちの食べ物多いだろう。肉まんを二つと、美緒に豆腐スープを一杯くれ」
矢崎粟は食べ物から視線を外し、馬鹿を見るような目で矢崎若菜を見た。「あなた誰?なんで私の食べ物をあげなきゃいけないの?」