「二人で料理を作るの?」
森田輝はキッチンに飛び込んでいく二人を見て驚きの表情を浮かべた。彼女の記憶が正しければ、この二人は料理が全くできないはずだ。こんなに慌てて戻ってきて何をするつもり?キッチンを爆発させるつもり?
そして、彼女の記憶が間違っていなければ、先に戻ってきたのは自分たちのはずだ。この二人は一言の挨拶もなく、先に走り込んでしまった。
矢崎粟は眉をひそめて黙っていた。何か様子がおかしいと感じていたが、はっきりとは言えなかった。
「ねぇ、先に戻ってきたのは私たちでしょ。キッチンは私たちが先に使うべきじゃない?」矢崎粟が黙っているのを見て、森田輝は直接キッチンに向かって叫んだ。
しばらくすると矢崎美緒が出てきて、二人に申し訳なさそうな表情を向けた。「すみません、皆さんもキッチンを使うとは知りませんでした。でも私たち朝あまり食べていないので、先に使わせてもらえませんか。」
「何を話し合ってるの?誰が料理を作りに戻ってきたか知らないし、先着順なら、キッチンに先に入った人が優先でしょ。」岡田淳もキッチンから出てきて、言葉は鋭かった。
これは彼女と矢崎美緒が道中で相談していたことだった。最初はキッチンを絶対に譲らず、矢崎粟たちに頼ませて、それから仕方なく先に料理を作らせる。でも自分たちはとても空腹なので、全ての料理を一緒に作ってもらうという計画だった。
計画は良かったが、成功するかどうかは魚が釣れるかどうかにかかっていた。
「二人とも冗談でしょ?私たち二人が食材を持って先に歩いていたのを見たでしょ。バカでも昼食の準備をしに戻ってきたって分かるはずよ。」森田輝は相手が強引な理屈を並べていると感じた。
「昼食を作りに戻ってくるとは言ってなかったじゃない。私はただ持ち帰るだけだと思ってたわ。とにかく私たちが先にキッチンに入ったんだから、使用権は私たちにあるはず。」
岡田淳は強気な態度で、つまり「ごね得するわよ、どうせ譲らないけど、どうするの?」と言わんばかりだった。
そして矢崎美緒は思いやりのある天使として、この時こそ雰囲気を和らげようと、「焦らないで、すぐ終わりますから」と口を開いた。
森田輝は焦りながら矢崎粟の方を見た。どうして矢崎美緒たちに先を譲るの?彼女たちが先にキッチンを使うなら、二人はここで待つべき?それとも畑に戻って手伝うべき?