お兄さんって可哀想だね

「だめよ、キッチンは私たちがあなたたちに譲ったんだから、その分食材を多めに出すのが公平でしょう」岡田淳は矢崎粟の言葉を受け入れるはずもなく、再び理を通そうとした。

「粟、淳の言うことにも一理あるわ。私たちが優先使用を認めたんだから、食材を多めに出すのは当然よ」矢崎美緒も小声で同調した。

「ちょっと待って、キッチンの共同使用を提案したのはあなたたちでしょう。私たちは待つことだってできるのよ。まるで私たちが大きな得をしているみたいな言い方はやめてください」矢崎粟は二人の様子を見て、まるでバカを見るかのように思った。この程度の知能でよく自分を出し抜こうとするものだと。

「粟、そんな怒った口調で言わないで。小島一馬と伊藤卓はまだ田んぼで作業中よ。お腹を空かせたまま働かせたくないでしょう」