025 矢崎美緒に聞けよ

矢崎若菜は長い間待っていたが、時々横目で矢崎粟の方を見ていると、彼女には食事を届ける気配が全くないことに気づいた。

山の方から時折吹く風が、矢崎粟たちの食事の香りを彼らの方へ運んできて、二人とも思わず唾を飲み込んだ。

「若菜、私たちから向こうに行ってみない?他人が作った料理を持ってきてもらうのを待つなんて、よくないんじゃない?だから彼女たちが怒って、私たちに食べさせないつもりなのかな?」矢野常は肘で矢崎若菜を軽く突きながら、二人だけに聞こえる小さな声で尋ねた。

「当然、彼女が持ってくるべきだよ。それが彼女の役目だから。」

矢野常は言葉を失い、なぜか矢崎若菜に対する嫌悪感が心の中に湧き上がってきた。しかし、空腹感と痙攣し始めた胃の具合で、矢崎若菜のことにこれ以上時間を無駄にする余裕はなかった。彼が行かないなら、自分で行くしかない。