022 対比

矢崎美緒の言葉に、岡田淳は思わず笑ってしまった。「草を抜くのがそんなに難しいわけないでしょう。サボりたいなら、もっとマシな言い訳を考えなさい」

「サボってなんかいないわ。本当に苦手なの。人には得意不得意があるものでしょう」矢崎美緒は相変わらず言い返した。

「もういいかげんにして。美緒ちゃんは小さい頃からこんな仕事したことないから、できないのは当然よ」

矢崎若菜は本来、矢崎美緒と岡田淳の言い争いには関わりたくなかった。男として距離を置きたかったのだが、岡田淳の攻撃的な態度を聞いているうちに、美緒への思いやりが理性に勝ってしまった。

「美緒、疲れたなら、そこで休んでいていいよ。お兄ちゃんがやってあげるから」彼は矢崎美緒の側に寄り、頭を撫でようとしたが、手が土だらけなのに気づいて下ろした。

矢崎美緒は目の前の男性を見つめ、目に涙を浮かべながら必死に首を振った。「大丈夫、頑張れるから」

その強がった様子に、矢崎若菜はまた胸が痛んだ。心の中で矢崎粟を責めずにはいられなかった。彼女が食べ物を分けてくれていれば、大切な妹がこんな目に遭うことはなかったのに。

傍らの岡田淳は口を尖らせ、小声で呟いた。「まるで誰もが初めてこんな仕事をするみたいな言い方ね」

しかし、彼女も小声で呟くことしかできなかった。矢崎家を恐れているわけではないが、紫音エンターテインメントの業界での地位が、彼女に多くの制約を与えていることは確かだった。

さらに、矢崎若菜への想いもあった。彼が矢崎美緒にそのように接するのを見るのは心地よくなかったが、それでも好きだった。また、美緒が彼の心の中で重要な存在であることも知っていたので、これ以上嫌われたくなかった。しかし、作業の速度は徐々に遅くなり、最後には矢崎美緒と同じようになってしまった。

矢野常はずっと黙って頭を下げていた。番組の収録が始まってからずっとこんな状態だった。思わず向かい側の矢崎粟を見上げると、言葉では表現できない感情が湧き上がってきた。

彼らは少し距離があったものの、矢崎粟は何となく会話を耳にしており、横目でちらちらと様子を窺っていた。

矢崎美緒と矢崎若菜の親密な様子も全て見ていた。