矢崎美緒は淡い黄色のワンピースを着て、上品な白いメリージェーンシューズを合わせ、頭には日よけ帽子をかぶっていた。その広いつばは彼女の顔全体をほとんど隠していた。
「さすが甘やかされて育った子ね。番組からのミッションカードを受け取ったのに、こんな格好で、どうやって作業するつもりなのかしら」隣にいた森田輝が矢崎粟の側に寄り、カメラが遠くにあることを確認してから、小声で矢崎粟の耳元に愚痴をこぼした。
実は矢崎美緒も畑で草取りをするのにワンピース姿は望んでいなかったが、今回は世間知らずの姫というキャラ設定を作り上げるため、持ってきた服は全てワンピースばかりだった。これは彼女が作業着として着られる唯一のものだった。他のは全て膝上丈のミニワンピースで、農作業に不便なだけでなく、いつ下着が見えてしまうかというリスクもあった。
スタッフは彼らを矢崎粟たちの畑の隣の区画に案内した。その後の流れは矢崎粟たちが以前経験したものと同じで、後は皆で自分たちで完成させることになった。
矢崎粟は向かい側の状況をあまり気にしていなかった。今日の割り当て量を完了するにはまだかなりの困難があった。特に全員の体力が徐々に消耗していき、作業のスピードも次第に遅くなっていった。
また、向こう側が追い越してくる心配もなかった。彼らは最初から遅れをとっており、向こうのメンバーはほとんどが甘やかされて育った人たちだった。こちらがこんなに疲れているのだから、向こうはもっと疲れているはずだった。
矢崎粟は草取りをしながら小島一馬の傍を通り過ぎ、彼の動きが徐々に遅くなっているのを見て、以前目にした光景を思い出した。
「手は大丈夫?」
小島一馬はその言葉に一瞬戸惑った。確かに朝方運んだ数バケツの水で、以前怪我をした左手が少し不快だったが、うまく隠せていると思っていた。まさか矢崎粟に見抜かれているとは思わなかった。
「具合が悪いなら、休んでもいいのよ。私たちはチームを組んでいるんだから、お互いに助け合い、お互いを高め合うの。一人で全ての負担を背負う必要はないわ。負けて食事がなくなっても、誰もあなたを責めたりしないわ」小島一馬の返事を待たずに、矢崎粟は自分の考えを話し、最後にニコッと笑った。