021 手は大丈夫?

矢崎美緒は淡い黄色のワンピースを着て、上品な白いメリージェーンシューズを合わせ、頭には日よけ帽子をかぶっていた。その広いつばは彼女の顔全体をほとんど隠していた。

「さすが甘やかされて育った子ね。番組からのミッションカードを受け取ったのに、こんな格好で、どうやって作業するつもりなのかしら」隣にいた森田輝が矢崎粟の側に寄り、カメラが遠くにあることを確認してから、小声で矢崎粟の耳元に愚痴をこぼした。

実は矢崎美緒も畑で草取りをするのにワンピース姿は望んでいなかったが、今回は世間知らずの姫というキャラ設定を作り上げるため、持ってきた服は全てワンピースばかりだった。これは彼女が作業着として着られる唯一のものだった。他のは全て膝上丈のミニワンピースで、農作業に不便なだけでなく、いつ下着が見えてしまうかというリスクもあった。