雨上がりの森の地面はふかふかと柔らかくなり、矢崎粟は村人が木を切る時に踏み固めた小道を歩いていた。
「もういい、矢崎粟。これ以上奥に進むと本当に森の中に入ってしまうぞ。ここは山が高く、木々が生い茂り、樹木は天を突くほど。中には猛獣がいるかもしれない。これ以上進むのは止めよう」ずっと彼女の後をぴったりと付いていた小島一馬は、彼女がさらに奥へ進もうとするのを見て、すぐに彼女の腕を掴んだ。
幼い男の子が自分の子供時代に経験したことと同じ目に遭うかもしれないと考えると、矢崎粟はただひたすら森の中へと歩き続けていた。
小島一馬にそう引っ張られ、彼女は少し我に返った。
「ごめんなさい、さっきは軽率でした」矢崎粟は急いで歩いたため、体の半分が雨に濡れていた。
小島一馬はついに心の中の疑問を口にした。「一体どうしたんだ?」