041 救助

雨上がりの森の地面はふかふかと柔らかくなり、矢崎粟は村人が木を切る時に踏み固めた小道を歩いていた。

「もういい、矢崎粟。これ以上奥に進むと本当に森の中に入ってしまうぞ。ここは山が高く、木々が生い茂り、樹木は天を突くほど。中には猛獣がいるかもしれない。これ以上進むのは止めよう」ずっと彼女の後をぴったりと付いていた小島一馬は、彼女がさらに奥へ進もうとするのを見て、すぐに彼女の腕を掴んだ。

幼い男の子が自分の子供時代に経験したことと同じ目に遭うかもしれないと考えると、矢崎粟はただひたすら森の中へと歩き続けていた。

小島一馬にそう引っ張られ、彼女は少し我に返った。

「ごめんなさい、さっきは軽率でした」矢崎粟は急いで歩いたため、体の半分が雨に濡れていた。

小島一馬はついに心の中の疑問を口にした。「一体どうしたんだ?」

「剛士は迷子になったんじゃなくて、誘拐されたんじゃないかと思うの」

矢崎粟の答えに小島一馬の心は締め付けられた。「何か根拠があるのか?」

数日の付き合いで、小島一馬は矢崎粟が根拠なく物を言う人間ではないことを知っていた。

「昨日私、剛士に会ったの。それに彼の気持ちを落ち着かせるために、駄菓子屋で飴も買ってあげた」矢崎粟は赤い飴の包み紙を取り出した。「見て、これは剛士の家の田んぼの近くで拾ったの。明らかに剛士はおばあちゃんを探しに田んぼまで来たはず。なのに、どうして行方不明になったのかしら」

矢崎粟は来た道を指差した。道には二人の足跡の他に、もう一つ深い足跡があった。

その足跡も雨水で洗い流され、さっきより浅くなっていた。

このままでは、彼女の推測を裏付ける唯一の証拠が、大雨の中で消えてしまうだろう。

小島一馬は後ろに数歩下がり、しゃがんでその足跡を注意深く観察した。「この足跡は俺のとほぼ同じ大きさだが、俺のより遥かに深い」

小島一馬は身長187センチ、体重75キロ。彼の身長と体重は男性の中でも珍しく高身長でバランスが取れていた。通常なら彼の足跡はかなり深いはずだが、その足跡は彼のものよりさらに深かった。

その人物は彼より背が高くて体格がいいか、それとも...矢崎粟の推測通り、バケツ一杯の水ほどの重さの子供を抱えているかのどちらかだ。

そうでなければ、こんなに深い足跡は残せないはずだ。