矢崎粟は子供を抱いて村の小さな商店に行って飴を買い、矢崎美緒は終始後ろをついて行き、後で矢崎粟にお金を返すとまで言った。
彼女から見れば、このような善良さをアピールする行為は、矢崎粟一人に任せるわけにはいかず、できれば矢崎粟が人気を得るために行動しているように見せかけたかった。
矢崎粟は彼女の思惑を見透かしていたので、気にせず子供を連れて飴を買うとすぐに家に帰った。
夕食後、しとしとと雨が降り始め、時間が経つにつれて雨足が強くなり、まるで空に穴が開いたかのように、瞬く間に地面を打ち、埃を巻き上げた。
矢崎粟は窓の外の土砂降りを見ながら、心に不安が湧き上がったが、深く考えずに早めに就寝した。
翌日、雨は依然として降り続け、時折雷鳴が轟いていた。
このような天気では外に出て作業することは明らかに不可能で、林監督も作業を割り当てず、全員を家に留めさせた。これは彼らがここに来て最も暇な一日かもしれなかった。
矢崎粟は窓辺に座って外の雨景色を眺め、森田輝は傍らでギターを弾き始めた。曲は情景にぴったりで、まるでこの雨の日のため、窓辺に座る人のために作られたかのようだった。
質素な農家の部屋の中は、静かで穏やかだった。
「集合、集合!」
二人がこの静かなひとときを楽しんでいる時、林監督の声が真ん中の部屋から突然聞こえてきた。森田輝は訳も分からずギターを片付け、矢崎粟を見て「まさかこんな天気でも農作業に出なければならないのか?」と尋ねた。
矢崎粟も分からなかった。前世でこのバラエティ番組を最後まで見ていなかったので、細かい部分は知らなかった。
二人は疑問を抱えながら真ん中の部屋に向かった。小島一馬と伊藤卓はすでに片側で待っており、全てのスタッフもここに集まっていた。
矢崎粟は森田輝を引っ張って小島一馬と伊藤卓の横に立ち、しばらく待つと、矢崎若菜と矢崎美緒のグループがようやくゆっくりとやって来た。
「今日は大雨で、本来は休ませるつもりでしたが、村の子供が一人行方不明になったそうです。村の人たちはすでに捜索を始めており、村長から助けを求められました。だから私たちも協力しましょう。」
林監督は全員が揃うと急いで説明し、声には焦りが混じっていた。