「ご忠告ありがとうございます。私たちは粟が安全に連れて行ってくれると信じています」森田輝は今や矢崎若菜の声を聞くだけで背筋が凍る思いで、目を上げる気力もなく、黙々とテーブルを片付けていた。
一方、矢崎粟は矢崎若菜を見上げ、優しい笑顔を浮かべた。
矢崎若菜は矢崎粟の笑顔を見て、心の中で毒づいた。この妹もついに我慢の限界に達したのだろう。この媚びるような笑顔を見れば、きっと和解を求めてくるに違いない。
しかし、簡単には許すつもりはない。これまでの苦しみは必ず返してやる。そうでなければ矢崎粟は懲りないだろう。
「私たちのやり方はあまり良くないかもしれません。町への良い行き方をご存知でしたら、ぜひ教えていただきたいのですが」矢崎粟は笑顔を浮かべながらも、淡々とした口調で言った。