036 呼び売り

「ご忠告ありがとうございます。私たちは粟が安全に連れて行ってくれると信じています」森田輝は今や矢崎若菜の声を聞くだけで背筋が凍る思いで、目を上げる気力もなく、黙々とテーブルを片付けていた。

一方、矢崎粟は矢崎若菜を見上げ、優しい笑顔を浮かべた。

矢崎若菜は矢崎粟の笑顔を見て、心の中で毒づいた。この妹もついに我慢の限界に達したのだろう。この媚びるような笑顔を見れば、きっと和解を求めてくるに違いない。

しかし、簡単には許すつもりはない。これまでの苦しみは必ず返してやる。そうでなければ矢崎粟は懲りないだろう。

「私たちのやり方はあまり良くないかもしれません。町への良い行き方をご存知でしたら、ぜひ教えていただきたいのですが」矢崎粟は笑顔を浮かべながらも、淡々とした口調で言った。

「もちろん、もっと良い方法があるわ」矢崎若菜は得意げに言った。珍しく矢崎粟が困っている様子を見て、気分が良くなっていた。

「所詮は村だから、道端で待って、通りがかりの車に乗せてもらえばいいのよ」

矢崎若菜は当然のように言ったが、まるでここで四人と竹かごの山を乗せてくれる車を見つけることが、地面から石を拾うように簡単だと言わんばかりだった。

食器を片付けていた森田輝と伊藤卓は揃って目を白黒させた。三日もここにいて、車が来る可能性がどれほど低いか分かっているはずなのに。

「はい、それは素晴らしい方法ですね。でも私たちには向いていないかもしれません。やはりトラクターに乗る運命なんでしょうね」矢崎粟はそう言うと、もう矢崎若菜に構わず、森田輝の後についてキッチンへ向かった。

矢崎若菜だけがその場に立ち尽くし、まだ得意げな気持ちを抱きながらも、どこか違和感を覚えていた。

小島一馬はすぐに戻ってきた。住吉おばさんは矢崎粟が一人でトラクターを運転することを心配し、息子の岡本さんに町まで送らせることを主張した。小島一馬は何度か断ったが、おばさんが譲らず、息子の岡本さんも最近田んぼに急ぎの仕事がないこと、自分も町で買い物があることを言い、小島一馬はようやく同意した。

そうして矢崎粟たちは矢崎若菜の目の前で、竹かごを背負って岡本さんのトラクターに乗り込んだ。

矢崎若菜の傍を通り過ぎる時、矢崎粟は小声で「さようなら、早く乗り合わせの車が見つかるといいですね!」と言い添えた。