073 小島一馬は殴られたい

もともと森田輝は別れを切り出すのが気が引けていたが、矢崎粟の言葉で事態の深刻さを認識した。

彼女はすぐに頷き、番組終了後に会社にマネージャーの変更を申請することを約束した。

森田輝が忠告を聞き入れたのを見て、矢崎粟もこれ以上雑談せず、すぐに眠りについた。

翌朝早く。

矢崎粟は7時前に起床し、身支度を整えた後、中庭で太極拳を始めた。

矢崎粟が太極拳を一通り終える前に、小島一馬が部屋から出てきて、彼女の流れるような拳法を見て、部屋の入り口に立って鑑賞し始めた。

矢崎粟は実は早くから小島一馬に気付いていたが、止めることなく続け、一連の拳法を終えてから初めて彼に挨拶をした。

「こんな早くに起きたの?ちょうど焼き餃子を作ろうと思ってたところ。身支度が終わったら手伝ってね」矢崎粟は手を洗ってキッチンに入った。