小島一馬のところから戻ってきた矢崎粟は、部屋に入った瞬間から森田輝が密かに自分を観察していることに気づいた。
矢崎粟は笑いながら尋ねた。「光里、そんなにこっそり見ないで。言いたいことがあるなら、はっきり言ってよ。」
彼女の言葉を聞いて、森田輝は大きな笑顔を見せた。「じゃあ、言わせてもらうわ。実は私、前からあなたと矢野スターの関係が普通じゃないと思ってたの。でも、まさか元カレだったなんて!これって大ニュースよね!」
「若気の至りよ。もう過去のことだから。」矢崎粟はパジャマに着替えながら言った。
彼女のそんな割り切った態度を見て、森田輝は笑みを浮かべた。「そんな風に見られて安心したわ。まだ引きずってるんじゃないかって心配してたから。早めに見切りをつけるのは、一生後悔するよりずっといいわ。」
実は森田輝が一番嫌いなのは、矢野常のような、彼女がいるのに他の女性と関係を持ち続ける男性だった。
前回の小島一馬の矢崎美緒と矢崎若菜に対する態度を思い出し、森田輝は小島一馬が矢崎家と矢崎粟の間の何かを知っているのを明確に感じ取った。
そうであれば、小島一馬の存在は矢崎家にとって時限爆弾のようなものだった。
この時限爆弾が爆発するのを避けるため、矢崎美緒は低姿勢で矢崎粟に取り入らざるを得なかった。
そう考えると全てが筋が通った!
森田輝は我慢できずに尋ねた。「あなたと矢崎若菜も付き合ってたの?」
矢崎の歌の神様の矢崎粟に対する高圧的な態度は、まるで普通の友達として扱っているようには見えなかった。
矢崎粟は眉を上げ、体を起こして神秘的に森田輝に言った。「私には大きな秘密があるの。聞きたい?」
森田輝はほぼ即座に頷いたが、数秒後に激しく首を振った。「やっぱりやめとく!ドラマでこういう大きな秘密を知る人って、たいてい良い結末を迎えないから!」
森田輝の言葉に矢崎粟は笑った。
「私と彼は血のつながりがあるの。」矢崎粟はそこまでしか言わず、森田輝に想像の余地を残した。
彼女の占いの結果によると、森田輝は信頼できる人で、背後から刺すようなことはしない。だからこれらのことを彼女に話しても問題ない。
しかし、彼女と矢崎家の関係がすぐに秘密でなくなるとしても、ある考慮から森田輝にはこれだけしか話せなかった。
森田輝が推測できるなら、残りの話はその後でも遅くない。