明らかに先ほどより興奮している矢崎若菜を見て、小島一馬は矢崎家の兄妹の矢崎粟に対する態度が、最初から少し特別だったように感じた。
初対面の他人のようでもなく、長年の友人のようでもない。
この数日間の付き合いで、矢崎粟は性格も良く、とても付き合いやすい人だという印象を受けたのに、なぜ彼女は矢崎家の兄妹に対してだけ敵対的なのだろうか?
矢崎家の兄妹は矢崎姓で、矢崎粟も矢崎姓...まさか!!
小島家と矢崎家は共にこの市の名門家族で、一般人には知られていない情報が、同じ上流社会の名門家族間で共有されており、小島家の長孫として彼もある程度知っていた。
約一年前、彼は矢崎家のことについて人から聞いたことがあった。
矢崎家の長年行方不明だった実の娘が見つかったようだが、なぜか矢崎家はこのニュースを公表せず、この失われていた娘を社交界のパーティーに連れて行くこともなかった。
矢崎家は実の娘が見つかったことを公表しないだけでなく、養女を今でも令嬢として扱い続けていた。
小島一馬は表情を変えずに矢崎家の兄妹を観察し、最近の数日間の彼らと矢崎粟との関わりを思い返した。
矢崎美緒が表面的には取り入りながら実際には矢崎粟を貶める行動、そして矢崎若菜が矢崎美緒の取り入りの後に必ず何らかの理由をつけて矢崎粟を非難する状況から見て、矢崎粟が矢崎家の本当の令嬢であるはずだ。
そして矢崎美緒は二十数年間にわたって巣を奪った偽物の令嬢で、この栄華を矢崎粟に返すのが惜しく、矢崎家の者の長年の感情を利用して、絶えず矢崎粟の足を引っ張っているのだ。
矢崎家に戻ったばかりの矢崎粟が矢崎美緒の相手になるはずもなく、当然彼女に制限されることばかりだった。
その核心を理解して、小島一馬は矢崎家が実の娘の発見を即座に公表しなかった理由が分かった。
これら全ては、恐らく矢崎美緒の功績なのだろう。
初日に矢崎若菜が矢崎粟に対して示した高圧的な態度や嫌悪感を考えると、矢崎粟の矢崎家の者の心の中でのイメージは、恐らく既に矢崎美緒によって様々な手段で非常に悪くされているのだろう。
小島一馬は元々、彼を見るたびに近づこうとする矢崎美緒が好きではなかったが、今はさらに嫌悪感を抱いた。