086 粥がない

矢崎若菜は矢崎美緒のことが心配で、まだ少し体調が悪かったものの、早く戻りたいと思っていた。

翌日の早朝、矢崎若菜の要望で、副監督は退院できる彼を番組スタッフのもとへ連れて戻った。

副監督が矢崎若菜を小さな中庭に連れて戻ったとき、入り口に入るなり矢崎粟たちが中庭の石のテーブルで朝食を食べているのが見えた。香りからすると、お粥と卵焼きのようだった。

県の町で朝食を食べていなかった矢崎若菜は、お粥と卵焼きの香りを嗅ぐと、すぐにお腹が空いてきた。

しかし、矢崎粟は彼と副監督が中庭に入った瞬間から見ていたにもかかわらず、一緒に朝食を食べるよう誘うことはなかった。

矢崎若菜が落胆していると、矢崎粟の声が聞こえてきた。「美緒たちは村民の家で朝食を食べています。」

矢崎若菜は呆然と彼女を見上げ、最後に「ありがとう」と言った。