しかし、今配信中なので、前回の出来事が再び起こるのを避けるためでなければ、矢崎粟を抱きしめて慰めたいところだった。
「以前、番組側は一位を獲得したグループに一つの要望を出せると約束しました」と林監督は矢崎粟を見ながら言った。「では、一位となった皆さんは、どんな要望を出すか決まりましたか?」
その言葉を聞いて、矢崎粟たち三人は一斉に伊藤卓の方を向いた。
彼ら四人は既に事前に相談していた。一位を獲得したら、最年長の伊藤卓に彼らの要望を伝えてもらうことにしていたのだ。
これは後輩たちから伊藤卓への贈り物でもあり、できるだけ多くの注目を集めてもらいたいという思いが込められていた。
「私たちは既に相談済みです。一位を獲得したら、番組側に村の学校へ本や教材を寄付してもらいたいと思います」伊藤卓は温かな笑顔を浮かべながら、カメラに向かって四人の要望を伝えた。「子供たちはみんな勉強熱心です。より良い学習環境を提供してあげたいと思います」