130 心の恐怖

小林美登里は怒り極まって、お茶碗を乱暴にテーブルに置き、お茶の半分以上がこぼれてしまった。

「さすがはおじい様が直々に教育なさった孫、さすがは矢崎グループの後継者様ね。今じゃ私のような産み育てた母親のことまで、愚かで無知な存在だと思っているのかしら?」小林美登里の声が個室に響き渡り、その怒りが容易に感じ取れた。

母親の怒りに直面しても、矢崎泰は冷静さを保ち続けた。「母上、矢崎美緒が望んでいることは、この矢崎家の唯一の娘としての立場です。それがお分かりにならないのですか?」

小林美登里の目が揺らいだ。「長男、あなたは小さい頃から美緒と親しくなかったから、美緒のことをよく分かっていないのかもしれないわ。彼女は優しくて可愛らしい子よ。あなたの言うような人間じゃないわ」