二人が途方に暮れていた時、林紅子は矢野常からの電話を受けた。
「矢崎美緒は、彼女の玉のペンダントは他人からの贈り物だと言っていた」矢野常は一旦言葉を切り、続けて言った。「私のも同じだ」
林紅子は要点を掴み、すぐに尋ねた。「同じ人物からの贈り物だと疑っているの?」
矢野常は電話を握りながら頷いた。「この玉のペンダントは単品では売っていないから、同じ人物だと思う」
「誰なの?」林紅子は追及した。
矢野常は暫く沈黙した後、言った。「ある目上の方です。その方は特別な立場にあって、この件について表に出て説明することができないんです」
林紅子はそれを聞いて眉をひそめた。「矢野常、今どんな状況か分かってる?その目上の方って一体どれほど特別な立場なの?後輩のあなたのために真相を明かすこともできないなんて。その方は、あなたの将来が台無しになるのを見過ごすつもりなの!?」
林紅子には矢野常の考えが理解できなかった。説明すれば済むことなのに、なぜできないと言うのか?
矢野常は林紅子の気持ちを理解していた。深く息を吸って言った。「彼女の立場では、たとえ表に出て説明しても誰も信じてくれないでしょう。最初に私が玉のペンダントを矢崎美緒に贈っていないと言った時、あなたも信じなかったでしょう?」
林紅子は何年も一緒に仕事をしてきたのに信じなかった。ネットユーザーが、ある目上の方の説明だけで、彼と矢崎美緒が潔白だと信じるだろうか?
しかも、その目上の方の身分が明かされれば、ネットユーザーはますます彼女の説明を信じようとしないだろう。むしろ、彼女が嘘をついていると思うかもしれない。
彼は、その方が自分と矢崎美緒の件に巻き込まれることを望まなかった。
林紅子は眉をひそめて尋ねた。「じゃあどうするの?このまま放っておいたら、あなたの評判に大きな影響が出るわ」
矢野常は疲れた表情で言った。「後でツイートを投稿するよ。信じるか信じないかは、もう任せるしかない」
これだけの証拠の前では、疑惑を晴らすのは天に登るより難しかった。
林紅子は何と言えばいいのか分からなかった。矢野常は本当に諦めるつもりのようだった。
林紅子は慎重に切り出した。「やっぱり、その目上の方に相談してみたら?」
矢野常は考えもせずに拒否した。「だめだ。もういい、切るよ」