134 アシスタントを探す

そこで、矢崎粟は矢崎泰と一緒に市教育局直属の幼稚園へ向かった。

二人は幼稚園の向かいの通りにある軽食店に座り、かき氷を食べながら待ち伏せをしていた。

引き抜きをするからには、当然ながら水面下で動く必要があった。矢崎弘の前でこの件を自慢するのは、森村博人がチームを連れて紫音を退職してからにしなければならなかった。

さもなければ、矢崎弘が怒り狂って意地悪く人材を手放さないということになりかねない。

矢崎泰は冷たいかき氷を食べながら、残念そうな口調で矢崎粟に言った。「君が自分でタレントを見つけて、私が他のスタッフを用意するって約束だったのに、今となっては私の出番はなさそうだね」

矢崎粟は笑顔で茶目っ気たっぷりに言った。「どうして兄さんの助けが要らないなんてことがありますか?むしろ兄さんの助けが一番必要なんです!」

矢崎泰は眉を上げただけで何も言わず、引き続き残念そうな表情でかき氷を食べ続けた。

「今、私は兄さんに信頼できるアシスタントを探してもらいたいんです」と矢崎粟は彼を見つめながら言った。「今のアシスタントには将来事務所のマネージャーとして新人の面倒を見てもらおうと思っています。それに今は信頼できるアシスタントを見つけるのが難しくて、あれこれ考えた結果、兄さんしか頼れる人がいません。兄さんが見つけてくれるアシスタントなら信頼できます!」

矢崎粟のこの明らかなお世辞に、矢崎泰は内心で笑いを感じながら、なぜか気分も良くなっていた。

「粟がそこまで私を必要としているなら、この件は引き受けよう」と矢崎泰は優しく言った。

兄の機嫌が良くなったのを感じ取り、矢崎粟も嬉しそうに会話を始めた。

「実は私の方で最適な人選がいるんだが、君の希望に合うかどうかわからない」矢崎泰の仕事の効率は高く、ほぼ即座に矢崎粟に候補者を推薦した。

矢崎粟は大きな目をパチパチさせながら、続きを促した。

「この人は私の大学の同級生で、同じ寮室の親友なんだ。仲も良い」矢崎泰はスプーンを置きながら言った。「彼は元々外資系企業で働いていたんだが、数年前に母親が重病で入院し、付き添いが必要になったため、やむを得ずその高給の良い仕事を辞めることになった。君も知っての通り、一度職場を離れると、同じような待遇の仕事を見つけるのは難しくなる。彼は今そのことで悩んでいるんだ」