そこで、矢崎粟は矢崎泰と一緒に市教育局直属の幼稚園へ向かった。
二人は幼稚園の向かいの通りにある軽食店に座り、かき氷を食べながら待ち伏せをしていた。
引き抜きをするからには、当然ながら水面下で動く必要があった。矢崎弘の前でこの件を自慢するのは、森村博人がチームを連れて紫音を退職してからにしなければならなかった。
さもなければ、矢崎弘が怒り狂って意地悪く人材を手放さないということになりかねない。
矢崎泰は冷たいかき氷を食べながら、残念そうな口調で矢崎粟に言った。「君が自分でタレントを見つけて、私が他のスタッフを用意するって約束だったのに、今となっては私の出番はなさそうだね」
矢崎粟は笑顔で茶目っ気たっぷりに言った。「どうして兄さんの助けが要らないなんてことがありますか?むしろ兄さんの助けが一番必要なんです!」